みえさんと産後ケアについて話そう

市議会議員いけだみえさんと、松山市の子育てに関してざっくばらんにおしゃべりする座談会 企画!

第1回目は、産後ケア事業関係者Aさんをゲストにお招きして「産後ケア」についておしゃべりしました。この記事は、そのときにお話した内容のまとめです。

そもそも産後ケアとは?

そもそも産後ケアって、いつ頃できたんですか?

産後ケアができたのは、ここ最近の話なんです。2021年4月1日から市町村の努力義務となり、2021年度に国からの予算がつきました。産後がしんどいと「もう産みたくない」という選択も強くなってしまいますよね。だから国としては、少子化対策のひとつなんです。

利用する場合は、どうすればいいのでしょう。

松山市では、

利用希望日の7日前までに松山市すくすく・サポート(市役所、保健所、南部、北条、中島)に申請

保健師が面談

市が利用を認めた場合、利用施設との調整を行なって利用を決定
※状況によっては希望通りの利用とならないこともあります

松山市産後ケア事業利用通知書が届く

利用の3日前までに利用施設に連絡

利用後、直接利用施設に自己負担金を支払う

という流れになります。
詳しくは松山市のウェブサイトをご覧ください。

ふむむ・・・思ったより複雑ですね。

利用されたお母さんから、「手続きが大変」という声を聞きました。保健所へ手続きに出向かないといけないんですよね。

乳飲児を抱えて、しんどい時にその手続きに行くのは、確かに大変だと思います。

そもそも、松山市に相談に行ける人って一握りなんですよ。どこに相談をしたらいいか分からない。「このぐらいの悩みは、相談するべきではない」と一人で抱え込んでしまう人が多いんです。

なるほど・・・。もっと気軽にサービスが使えたらいいんですけどね。産後ケアって、どんな風に告知してるんですか?

最初のアナウンスは、母子手帳を配布するタイミングですね。母子手帳と一緒に案内チラシが配布されます。「こんにちは赤ちゃん訪問」といって、松山市に住民登録している生後4ヶ月未満の乳児がいるすべての家庭に母子保健推進員さん(以下:母推さん)が訪問してくれるサービスがありますよね。母推さんの話によると、訪問時にはなかなか産後ケアのプッシュはできないって言ってました。

母推さんは、「その人の状況をキャッチして保健師さんに伝えること」が仕事なので、なかなか立ち入ったことができないそうなんです。なんとかピックアップしようとしても、「これ以上はやったらダメ」「こういう言い方をしたはダメ」とか、上との兼ね合いがあるようです。

そうなんですよね。直接悩みを聞いたら、もっとやってあげたいし、踏み込みたい気持ちがある。でも、踏み込んだときのリスクというか、思い違いだったりすると言及されたりもあるようです。

もともと「こんにちは赤ちゃん訪問」は、お母さんの困り事に答えられるメニューがなかったんですよね。お母さんの本当の困り事って、「赤ちゃんが泣いてばっかりで、ずっと抱っこしておかないといけないのが辛い」とか、「家はぐちゃぐちゃで、皿洗いは溜まるし、料理するのも嫌だけどしないといけない状況」とかなんですよね。そういう話に、「こういう支援があるから利用してみますか」って解決策を出せなかった。だから今、「産後ケア」という施作ができたのはよいことですね。

「休みたい」の重みの違い

いつのタイミングで書いたのか忘れちゃったんですけど、産後うつを調べるためのアンケートってあるじゃないですか。「自分自身を傷つけるという考えが浮かんできたことがあるか」などと問われるやつです。

エジンバラ産後うつ病自己評価表ですね。「9点以上チェックが入っていたら報告する」「自分を傷つけたい気持ちがちょっとでもあったら報告する」など、支援のためのルールがあるんです。

この質問、素直に答えられる人いるんですかね。私は、そっとしておいて欲しいタイプ。大きな問題にしたくないから、ちょっと辛くても「辛くない」に○付けてしまうかも。本音で書ける人って一握りなんだろうなって思います。

その人の性格によりますよね。本当はしんどいのに書けない人もいれば、少しオーバー気味に書く人もいたり。以前に心療内科に通っているとかメンタルに持病がある場合は、産後ケアはかなりな確率で通るようになっているのですが・・・。

産後ケアは税金で提供されているから、保健師さんたちは、利用に許可を出すか、出さないかの選別に悩むって言ってました。

世の中はすごく便利になったし、「世の中の流れに乗っかってうまくやるのがカッコイイし優秀」っていう発想になっちゃっている。そんな世界で生きているから、赤ちゃんを産んだからって価値観や考えが変わるわけではないんですよね。私自身も、「どんどん仕事をしたい!」という感覚で生きてきたから、子どもをケアするために私自身の考えを切り替えるのはとても大変でした。

以前、両親とも県外出身でサポートがないお母さんの訪問サポートをさせてもらったことがあったんです。

「旦那さんが出張する日に、沐浴等を手伝って欲しい。それだけでいいんです」というオーダーだったんですが、実際におうちにお伺いしてみたら、「不安でいっぱいなんです」って、育児に対する質問や不安な気持ちがあふれ出したんですね。

一通りお話を聞いたあと、赤ちゃんの沐浴を手伝って、そのあとお母さんにもお風呂に入ってもらおうとしたら、「もういいです。私は夫が明日帰って来たら入るんで」って、すごく遠慮されている感じでした。

その後、また同じ方から依頼があったんですけど、保健師さんが彼女に対して誤解をしてしまって。

「今度は、自分で(赤ちゃんを)お風呂に入れましょうね」みたいな話をしてしまったみたいなんです。それを聞いた彼女は、「じゃあ、産後ケアは利用しなくていいです」って、ケアの利用を辞めてしまいました。

なんだか、切なくて。

毎日毎日自分がやっている作業を、一日だけ誰かに代わってもらうのはだめなのかな?

一方で、保健所で状況をオーバー気味に伝えて、遊び感覚で産後ケアを使っている人もいるようなので・・・やるせないです。

休息で使ったらダメなんですかね?私、第一の希望は休息でした。私も第一希望は休息でした。

保健センターも「休息としての利用」を認めてはいますよね。ただ、最近の傾向では「休みたい」の程度が違っているので。演技して持ってくるのも分かってしまって。余計やりにくくなっているみたい。
本当に必要な人にサービスを届けるのはどうしたらいいのか。

本当に必要な人という言い方になると。自分に「本当に必要なんですか?」って尋ねられたらすごく辛くなるから。遠慮しちゃう人もいるだろうし・・・みんなが使えるようになったらいいのかな。

この世の中、子どもを産んでくれただけで「ありがとう!」ぐらいにしないといけないですね。スピーディーに稼ぐのが偉い、輝いている女性がカッコイイ・・・みたいな傾向があるけれど。子育てをしている人たちは、それらの生活と真逆のことをしている感覚がある・・・少なくとも私はそうでした。

ずっと割り切れる世界にいた人たちにとって、1+1が当たり前に2にならないことって、すごいストレスなんです。仕事って、「こうすればこんな成果が出る」っていうのが分かりやすいけれど、子育てはそうじゃないんですよね。オムツも汚して洗う、汚して洗うの繰り返し。何も生産性がないって思っちゃうんですよね。

やっぱり、全員受けられたらいいですね。妊婦健診のA券、B券みたいに。
2〜3回は全員使えるようにして、不要だったら使わなくてもよくて。3回以上必要かどうかは、ケアする機関が見極めるとか。

お母さんの、“本当”のニーズとは?

産後ケアを利用する人たちの傾向って、どんな感じなのでしょうか。

孤立している人。休みたい人。
ワンオペ育児している人は、いっぱいいっぱいになっているから何もかも投げ出して休める場所も必要ですよね。

私たちは家に帰ってからの育児が楽になるように、母乳のことや食事のアドバイスをしたいと思うのだけど、さっきも話に出たように実際に来る人は「赤ちゃん見ておいてください。私は休みたいので」みたいな方も多いです。それじゃ役割としては、助産師ではなく保育士さんだなぁと感じてしまって、正直ちょっと複雑です。

「お金でサービスを買って解決するのが当たり前」な社会になってきているから。そんな感覚になっちゃうのかもしれないですね。

うちはマンツーマンでケアを行っているので人件費がかかるんです。正直、国の助成金では経営が厳しくて。たくさん人がいる産院は、既にあるサービスの上に加算されて収入になるのかもしれないけれど、うちはそうではないです。

自己負担金が1万円以上のときは現実的じゃなかったけれど、4,000円になったから使いやすくなったというのはきっとありますよね。

今って、ネットで何でも調べられるけれど、その人と赤ちゃんにぴったりの情報なんてあるわけがないんですよね。そこをプロに教えてもらう機会は絶対必要だと思うんです。

もちろん休息も大切ですが、家に帰ってからやっていけるように、プロに関わってもらう大事さを知ってほしいですね。

先日、乳腺炎で悩んでいた人が産後ケアを利用してくださいました。その方は短乳頭だったので、ずっとキャップを使って授乳をしていたそうなんです。産後ケアで、授乳の方法をアドバイスしたら、キャップなしで授乳ができるようになって。そこからすごく子育てがラクになったそうなんです。そういうのを見ると、産後ケアつかってもらってよかったなって思います。

補助対象になる7回を全部使って、母乳育児に向き合って、その後母乳育児が順調だったっていう人もいました。あと産後、まわりに頼れる人がいなかったから、7回分全部つかって7日間連泊する方もいました。

いろんな使い方があっていいと思います。

そういう使い方提案はぜひぜひ発信してほしいですね。
初産の方は、きっとそういうの分からないと思うので。

全体を見ていると、やっぱりワンオペの人がしんどそうな感じですか?

近くにサポートしてくれる人がいても、しんどい場合もあります。たとえば、実母との関係がよくないとか。「親から離れたくて、実家から帰ってきました」という方もいます。

そうか〜・・・いろいろですね。
先日、子どもの集まりに参加したんですが、最終的には旦那さんの悪口大会になっていました。「離婚考えています」という人もいて、みんな怒りが溜まってるようでした。「子どもは可愛く思えない瞬間がある」と、言われている方もいました。

日本人の感覚だと、どうしても“手伝ってもらう”っていう感覚なんですよね。
旦那さんに対しても、親に対しても。だから苦しくなる。

あと、産後を楽にするには、やはり妊娠・出産だと思います。
心身共に疲れすぎない、ヘトヘトになるお産をしないこと。
そのために、助産師は女性に寄り添うのだと私は思ってます。

産前サポートもあったらいいかもしれません。

なるほど・・・産前のサポート、いいですね。

ただただ旦那さんの愚痴でも、親の愚痴でもいいから、話を聞いてほしいという人もいるだろうし、子育てのアドバイスがほしい人もいる。

利用者が何を望んでいるかが、正しく伝わるように、ちゃんとしたアンケートがあったらいいんですけどね。

ストレングスファインダーってあるじゃないですか。
あれって1時間ぐらい時間かけて設問に答えていきますけど、導き出される答えがドンピシャでびっくりしました。

今はAIも発達してますし、その人の困り具合、本当のニーズがわかるような心理アンケートがあったらいいのかも。

導き方ですよね。
今の問われ方は、本当に答えてしまうと自分が情けなくなるような感じがする。
自己卑下と自己否定。自分の価値が低くなってしまうような気分になってしまいますよね。

出産をした助産所や産院で、そこの助産師や医師が推薦できるようなしくみがあればいいですよね。入院中見てたら、だいたいどんな人か分かりますしね。

あと、表面上では明るくても隠し持っているケースもあるから、やっぱりみんな使えた方がいい。

上手くやってる人って、「上手くやるため」にエネルギーを使っているかもしれないですもんね。本当はすごく疲れているかも。

もっと、産後のお母さんに寄り添えるしくみがあった方がいい気がしてきました。
いろいろとアイディアをありがとうございます!
もっとよりよい産後ケアの活用の仕方がないのか、考えてみます。

リアルな現場の声、そしてそれぞれの子育ての経験を持ち寄り、とてもよい意見交換の場となりました。

産後ケアの実情も、なんとなく見えてきました。

今のやり方だと、使いたい人が使えていない状況なのかもしれません。

全員が当たり前に産後ケアを受けられる・・・・そんな制度があってもいいのかも!?

言語化が難しい人も、心理状態がわかるような、そんなアンケートがあってもいいのかも。

いろんなアイディアが出てきて、明るい未来が見えたような気がしました。

ご協力いただいたAさん、ありがとうございました。

みなさんも、ご意見、ご感想ありましたら、ぜひお気軽にお聞かせくださいね。

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