松山市における、子どもの虐待と貧困の現実をご紹介した前回の記事、読んでいただけましたか?
今回は第二弾として、「子どもの貧困」と「虐待」をなくすために、みえさんが提案していることについて掘り下げていきます。
スクールソーシャルワーカーの必要性
みえさんは、子どもの貧困や虐待をなくすために、まずは何をすべきだと思いますか?
子どもからの言葉と、社会課題としての言葉にはズレがあります。子どもは自分から、「虐待されています!助けて!」とは言い出せない。なぜなら、自分の親だし、生まれた時からそれが当たり前だから。
だから、子どもの気持ちを翻訳するプロ・スクールソーシャルワーカーの設置をしたいと考えています。
スクールソーシャルワーカー???
スクールソーシャルワーカーは、課題を抱える児童生徒や保護者への支援、家庭、学校、自治体との調整を行う児童福祉の専門家のことです。国の方針としても、2020年度までにスクールソーシャルワーカーの常勤的配置をめざし、1万人増員する考えも示されています。
そのための補助金も動いていたり、他県でも導入が進んでいます。松山市でも、これまで配置を求める意見が何度も出ていますが、残念ながら、現在配置には至っていません。
スクールソーシャルワーカーが配置されると、どのような効果が期待されますか?
スクールソーシャルワーカーは、子どもや家庭が抱える問題ごとに関するプロです。ちょっとした行動や発言から問題を読み解きます。
例えば、子どもがポロっと「昨日、食べさせてもらえんかったんよね〜・・・」とつぶやいたとします。そこから掘り下げて、問題の本質に迫っていくことができます。
なるほど!
常に学校という場所で児童と密な関係を築いていくことによって、大きな問題が起こってからではなく、小さな芽の状態のときから関わることができるのですね。
子どものことを一元化する「こども部」の創設
次に、松山市の定例会で、みえさんが提案していた「こども部」の創設についてお伺いしたいのですが、「こども部」はどんなビジョンを持ってつくろうと考えているのですか?
市長部局や教育委員会など、子どもに関係することを一箇所に集約した部署のイメージです。
今、保健所を初め保健福祉部、子ども・子育て担当部、教育委員会など、子どもを救うための部署はたくさんあります。それぞれの部署は所管する事務が決まっているので、最適な窓口を探す親子が、たらい回しになってしまうことがあるようなのです。
なるほど、役所での手続きではありがちな問題かもしれないですね。「管轄ではないから、別の部署に・・・」ということですよね。
子どもに関する問題は年々増えていて、複雑多様化しています。この解決には、子ども本人のみならず、家庭や学校、地域などへの働きかけも不可欠です。
例えば、子どもの貧困に関していうと、経済力を持って生まれてくる子どもはいません。
子どもを養育している家庭に経済力が貧しくても、保護者の養育能力にさまざまな問題が生じたとしても、子どもは希望を持って自分らしく能力を伸ばして育つことができるように社会全体で補い合い、子どもの幸せな成長を保障できる松山市をつくりたいです。
納得・・・!早く、地域が一緒になって子どもの問題に取り組めるようになって欲しいです。
他県で、うまくいっているケースはあるのですか?
神戸市では、こども家庭局に障害児療育や診療所機能をくっつけたり、別組織で所管していたDV業務をひとり親家庭支援とあわせ、こども家庭局で取り扱うことになりました。
尼崎市では、教育相談や不登校支援を担う家庭部局を集約するなど、総合的で切れ目のない支援を目指して子どもの育ち支援センターの設立準備を進めています。
さらに、海老名市では、子ども担当部署と教育委員会を集約して、妊娠・出産時から乳幼児、義務教育、青少年期まで切れ目のない一貫した子育て支援を総合的に展開しています。
おぉ・・・!他県は結構進んでますね!
四国の例も挙げると、香川県では、子ども政策推進局を設置し、青少年育成業務を担う子ども政策課と児童福祉や母子保健業務を行う子ども家庭課を設置しています。
先進的な自治体の例を見ると、これまで以上に子どもを主軸において、子どもの成長段階に応じて切れ目なく、総合的な支援をし続ける工夫をしています。
地域が子どもに主軸を置けば・・・少子化の解決にも繋がりそうです。
関係部局が連携して取り組むというスタイルには限界があります。かかわる部局が多いほど、責任が不明確になりがちで、スピーディーな支援が難しくなることがデメリットです。
問題を抱えた子どもに一番近い現場の判断で迅速に対応する、これを実現するのが、関係部署の一元化だと思っています。
ふむふむ。
それで、みえさんの提案に対して、議会での反応はいかがでしたか?
以下のようなお答えをいただきました。
本市では、簡素で効率的な組織を目指す中、特に早急かつ重点的に取り組むべき課題等に対しては、部の事務を部長と担当部長が分けて担うことで推進体制を強化することとしています。
そうした考えのもと、子ども・子育て支援新制度の施行などにより、中核市としての本市の果たすべき役割が増したことから、平成26年度には保健福祉部に子ども・子育て担当部長を配置し、幼児期の学校教育や保育、子育て支援に関する取り組み等をできる限り集約し、総合的に推進してまいりました。その中でも同年に新設した子ども総合相談センター事務所は、ゼロ歳から18歳までの福祉・教育の双方にまたがる問題を一元的に受けとめ、庁内外の関係機関との連携により、迅速に対応できる体制を整えたものであり、相談対応件数も年々増加し、子ども子育てに関する諸問題の解消につながっています。
今後も子育て環境を充実し、子どもたちの未来を応援する松山の実現に向けて、こうした取り組みを継続することはもちろんのこと、子ども部の創設を含め、子ども子育てに関する施策の推進について、リーダーシップを発揮できる体制を関係部局と連携をとりながら調査研究していきたいと考えています。以上でございます。
なるほど。今後、「こども部」の創設も検討しますが、今は、「子ども総合センター事務所」がさまざまな問題を解決しているよ〜ということですね。
はい。子ども総合センター事務所もたくさんお仕事してくださっていますが、まだ松山市では福祉に関しての余裕がないと感じています。「なにかおかしい。問題がありそうだ。」そう感じた職員がいたとしても、仕組み上、家庭に踏み込むことが難しかったりするので、問題がスルーされてしまうことも。子どもの問題に主導的に踏み込んでいくのは、まだまだ難しい状況ですね。
家事代行ソーシャルワーカーの可能性
人は、我慢すると疲れてしまいます。
例えば、子どもがたくさんいて、そのうち障害を持った子どもがいて、借金を抱えている家庭がいたとします。
何もかも疲れてしまって、子どもに当たってしまう。そんな状況が容易に想像できます。
ごはん、洗濯、皿洗い・・・家事がたまってくると気持ちも沈んでしまいます。
そういう時に、「家事代行」が気軽に使えるといいですよね。家事をアウトソーシングできるだけで、どれだけ気持ちがラクになるか。
「家事代行」って、お金持ちしか使えないっていうイメージがありますが、しんどい状況の方こそ家事代行を使える社会になって欲しいって思っているんです。
新しい考え方ですね!
すごくいいと思います。
「家政婦は見た!」っていうドラマがありましたよね?
私、「家政婦ソーシャルワーカー」みたいな人がいて、家庭のことをお手伝いしながら、子どもの問題を解決していく・・・そんな仕組みができたらベストだなって思っています。
今の人たちは、人に頼るのがとにかく苦手。
「助け合い」というけれど、実際は「助けてあげる」方の教育しか受けてなくて、「助けられる」ことに慣れていないんですよね。
だからこそ、「おせっかい力」が大事だと思うんです。
素敵です!
でも、貧困家庭が家事代行を依頼するには、お金の問題が立ちはだかりそうですね。
発達支援や介護保険、世の中のニーズに合わせていろんな仕組みができてきました。
家事代行を制度化するのも不可能ではないと思います。
さすが、みえさん!
制度から変えていくのですね!!!
もちろん制度になればベストですが、制度に持っていくのはとっても大変です。
まず他県でのモデルケースがないか調べ、事業をつくり、仕組みをつくり、予算措置をとる流れが必要です。
大変ですが、道筋が見えるまで持っていくのが私の仕事。途中であきらめずに、いろんな方法を探したいです。
ふむふむ。
「予算措置」という言葉は、前回の子どもの医療費の件でもたびたび出てきましたよね!
次回のインタビューでは、ぜひ「お金」についてお伺いしたいです!
そんなわけで、次回のインタビューでは、みんな気になる「お金」について。どうやってお金が動いていくのか、紐解いていきます。
お楽しみに!
いけだみえ