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2019年11月28日、愛媛大学にて、「第5回愛媛大学スポーツシンポジウム〜私たちがスポーツの力を活かしていくために〜」が開催されました。
今回5回目となる、このシンポジウムには
主催の社会共創学部 地域資源マネジメント学科 准教授 山中亮先生の熱い想いがあります。
今回は、開催趣旨を紹介しつつ、イベントレポートをグラフィックレコーディングでご紹介。
スポーツの可視化に挑戦します。
表向き(?)のレポートをA面とし、
私のリアルな感想や山中先生のことをB面でご紹介。
まずはA面、レッツゴー!!!
開催趣旨:スポーツの価値を今一度見直す
山中先生は小学生の頃からサッカーをしており、学校卒業後は12年間愛媛県の職員として小学校3年、中学校9年、教員をしていました。退職後、広島サンフレッチェと愛媛FCにて9年間コーチとして活躍。現在は、愛媛大学の社会共創学部、地域資源マネジメント学科で准教授をされています。
プレイヤーとして、コーチとして、そして現在は教育者という立場として。いろんな角度からスポーツに関わりを持っている山中先生には、今のスポーツのあり方に疑問を感じていました。
日本では、スポーツの本当のよさ、楽しさを感じられていないのではないか。
たとえば、国体やオリンピックなどで顕著ですが、スポーツをきっかけにどれだけ儲けられるかの経済効果を一番に考えられていたり、結果を求めるあまり、窮屈なものになっていたり、エンターテイメントの要素が強くなりすぎていたり…。
スポーツとは本来、誰にでも身近にあって、自由なはず。
スポーツの素晴らしさを、今スポーツをやっていない人に対しても伝えたい。もっと気軽に関わってほしい!
そんな想いから、シンポジウムをはじめたのでした。
講演:成迫健児さん「スポーツの力と自分自身の成長」
まず最初に、第29回北京オリンピックの400mハードルに出場し、現在では大分県議会議員をされている成迫健児さんによる講演が行われました。
成迫健児(なりさこ けんじ)
1984年7月25日生まれ。大分県佐伯市出身。2003年筑波大学入学後、2007年ミズノ株式会社に入社。2013年、地元の佐伯市に戻り、佐伯市役所職員として勤務。現在大分県議会議員(1期)。
第94回日本選手権 400mハードル優勝(49秒1)、第29回北京オリンピック400mハードル出場、2009年国際グランプリ大阪 400mハードル優勝(49秒00)
成迫さんは、スポーツに関わることによって
▶︎心身両面にわたる健康の保持増進
▶︎青少年への健全育成(目標設定をして何かに取り組むということそのものが、成長につながる)
▶︎コミュニティの醸成(仲間ができる!)
▶︎経済発展への寄与
等のメリットがあると伝えました。
成迫さんは大学時代、筑波大学に入学し陸上をしますが、
もっと速くなりたいという気持ちが強く、他校(日大)の合宿へ参加するなど、周りの反対を押し切って、型破りの方法で自己の力を磨いていきます。
ミズノに入社し、社会人アスリートになってからは自分のスタイルと、社会人としてあるべき姿をすり合わせ、ブランドを背負って走る覚悟を築いていきました。
その後は、故郷の大分県に戻りたい気持ちが芽生え、佐伯市役所の職員に。
子どもに陸上を教えるなど、スポーツにも関わり続けました。
その後、「スポーツで大分県をよくしたい!」と一念発起。
現在、大分県議会議員として、ご活躍されています。
「自分の限界に挑戦すること」「自分のやりたいことをあきらめないこと」は、スポーツにおいても人生においても大切なこと。
自分の進みたい道を切り開いていく大切さを、うったえかけました。
質疑応答タイムでは、参加者からの質問にお答えいただきました。
Q1.大分県でラグビーのワールドカップが開催されましたが、どう感じましたか?
A1.開催中は、血が騒いでじっとしてられませんでした。佐伯市のみなさんと200〜300人くらい集まって応援しました。連帯感が生まれるのもスポーツの醍醐味。これからも地域の人たちを巻き込んでいきたい。
Q2.議員としてスポーツをどう生かしていますか?
A2.スポーツを活用して地域を活性化させることもできるのではないか。
スポーツの理解を深めるイベントを開催したいです。
Q3.オリンピアだったり、議員だったり、いろいろな立場で地域に関わっていますが、立場によってはめんどくさいこともあるのでは?
A3.そんなことはないです。スポーツをしている人は、みんないい人なので。
スポーツマンシップで話せば、分かり合えます。
Q4.ワールドカップのあと、何か地域としての展開はありましたか?どんな取り組みをしていますか?
A4.「オリンピックレガシー」、つまりオリンピックを開催することで地域に何を残せるかが大切だと思うので、今後合宿の誘致をするなど、ラグビー選手にとってのホストタウンにしていければと思っています。
愛媛県内におけるスポーツへの取り組み①:オリパラ・マスターズ推進室
成迫さんの講演終了後は、愛媛県内におけるスポーツへの取り組みに対しての発表がありました。
まずは、愛媛県スポーツ・文化部スポーツ局オリパラ・マスターズ推進室による発表が行われました。
愛媛県スポーツ・文化部スポーツ局オリパラ・マスターズ推進室は、えひめ国体開催後に発足された組織。
えひめ国体のソフト・ハード面のレガシー(遺産)を最大限に生かし、、すべての県民の皆さんがスポーツを楽しめる環境づくりやさらなる競技力の向上に力を注ぐとともに、スポーツによる交流促進やスポーツを活用した地域活性化を図るなど、さまざまな取組みを展開し、「スポーツ立県えひめ」の実現を目指しています。
東京オリンピック・パラリンピックに向けての取り組みを行っており、具体的には
✔️2019年12月に開催された「国際フレンドリーマッチ in愛媛」(東京2020オリンピックに向け、愛媛県で合宿するマレーシア代表バドミントンチームと日本の競合実業団チームの選手たちが対戦)
✔️2020年9月に開催される日本スポーツマスターズ2020愛媛大会 (35才以上のアスリートが参加するスポーツの祭典)
✔️聖火リレー
✔️車椅子バスケの説明
✔️聖火ランナー講演
✔️車椅子バスケの説明
✔️PRキャラバン
✔️相手国との交流や事前合宿のためのホストタウン事業
などの窓口を担っています。
愛媛県内におけるスポーツへの取り組み②:男女参画・県民協働課
続いて、愛媛県県民環境部県民生活局男女参画・県民協働課 の取り組み発表。
2017年のえひめ国体では、延べ18,000人のボランティアがいました。
サイクリング大会や、愛媛マラソンでも、たくさんのボランティアの方に支えられています。
2020年 日本スポーツマスターズや、2022年 ねんりんオリンピックなど、これからもボランティアが必要なイベントはたくさんあります。
それらに向けて、スポーツボランティアを要請するために立ち上がったのが、男女参画・県民協働課。
具体的には、やりがいや楽しさを学ぶ「基礎研修」や、役割や心得を学ぶ「リーダー研修」などのボランティア研修を行います。
四国では愛媛のみの活動で、愛知から高校生も参加するなど他県からも注目されています。
アスリートの前向きなパワーをもらえるスポーツボランティア!
ご興味ある方はぜひ参加してみてください。
愛媛県内におけるスポーツへの取り組み③:愛媛・子どもスポーツ推進協議会
最後に愛媛・子どもスポーツ推進協議会の取り組み発表。
愛媛・子どもスポーツ推進協議会は、スポーツを通じた子育て支援や健康増進を図るため、県内企業や県、大学など6団体でつくる団体です。
✔️遊び場の減少
✔️共働き率の増加(子どもと遊ぶ時間が減っている)
↓
日常的に運動する子どもが減っている
↓
子どもたちの体力低下
今、地域が抱えている課題は明確です。
スポーツを通じて誰もがよりよく成長し、愛媛の子どもを元気にハッピーにするため、2020年はスポーツ体験会や交流会イベントなどを企画し、15,000人の子どもがスポーツにふれあう機会を設けることを目標に掲げました。
オリンピック応援プログラム:アカペラオリンピック応援ソングリサイタル
愛媛県唯一のアカペラサークル、「愛媛大学アカペラサークル アカペラオレんジ」が登場。
さまざまな応援歌を披露してくださいました。
第二部では、愛大ダンス部も加わり、
NHK 2020応援ソング「パプリカ」をみんなでダンス。
会場に一体感が生まれるよい時間でした。
パネルディスカッション:「私たちがスポーツの力を活かしていくために」
ラストは、このシンポジウムのメインとも言えるパネルディスカッション。
コーディネーター
山中 亮(愛媛大学)
パネリスト
成迫 健児 氏(オリンピアン:陸上競技)
武田 大作 氏(オリンピアン:ボート競技)
井上 聡 氏(パラリンピアン:マラソン)
土佐 礼 子 氏(オリンピアン:マラソン)
谷村 隼美 氏(1964年東京オリンピック聖火ランナー)
山中先生も含め、みなさんスポーツに関わっている人ばかりということで、最初のお題は「なぜ今もスポーツに関わっているの?」でした。
成迫さん 当時は、とてもスパルタな現場でした。でも楽しかった。だから、今もスポーツに関わっています。
武田さん 純粋に楽しいからです。カッコいいオヤジになりたいから、スポーツを続けます。
井上さん スポーツをすると体力がつきます。私は障害者なので、体を鍛えたいという想いが強いです。社会と繋がりができるのもよいです。
谷村さん スポーツの目標をどこに置くかだと思います。メダルをとることなのか?代表を目指すのか? 目標を間違えないように据えておくと、スポーツと関わり続けることができる。
土佐さん スポーツは生活の一部です。今は市民ランナーとの交流を楽しんでいます。
純粋に「楽しいから」という理由で関わり続けている人ばかりでした。体力が付き、社会ともつながることができて、いいことづくし。
ただ、単に目標を「メダルをとること」や「代表になる」ことに設定してしまうと、目標を失った時にスポーツと切り離されてしまいます。
「なんのためにスポーツをするのか?」を自分なりの目的を、心の中に持っておくことがとても大切だと感じました。
2番目の議題は、「子育てとスポーツ」の関係性について。
スポーツの世界は、学びの連続です。
スポーツの力を活かして、我が子にコーチングはできるのか?
実体験を語っていただきました。
成迫さん 父親から陸上を教えてもらっていたのですが、父親は絶対的な立場でした。理論がほかと違っていても、聞くことができていたのは父親だったからかもしれません。
武田さん 指導をしている時は、厳しく接することも多いと思います。「怖がられてしまうのでは?」と心配する人もいますが、スポーツをやっているとコミュニケーション力も高まるので、分かってくれると思います。
井上さん 選手として頑張っている姿は、子どもにも響くと思います。
土佐さん 子育てにオリンピックは全く関係ないと思っています。子どもを頑張らせるのは本当に大変なことです。自分では頑張ることができても、他人に頑張らせるのは難しい。スポーツと子育ての忍耐力は、別物だと思います。
谷村さん 娘はスポーツをしていましたが、ついつい口を出しすぎてしまいました。我が子を見ていると、マネージャーのような気分になってしまいます。
参加者より「親に影響されてスポーツに興味を持った」という声が出ました。子どもは、知らず知らずのうちに親から影響を受けて育ちます。
親子であるがゆえに、感情的になってしまうこともあるかもしれません。そんな時は、子どもと一緒に親も成長できるチャンスなのかもしれません。
最後の議題は、「スポーツと失敗」。スポーツには失敗がつきものです。それでもなぜ関わり続けるのか。その理由について考えました。
成迫さん オリンピックの経験で、いったん自分のハードルは完成したと思っています。完成したと思っている人は、あえてミスの研究をします。ミスの認識を変えていくのです。
井上さん 毎年車椅子マラソンに参加していますが、完走できたのは2回だけです。車椅子で、フルマラソンを3時間以内で走る。いつもギリギリの中で挑戦し続けています。いつも、誰もできないことにチャレンジしていたい。チャレンジするから失敗もすることは当たり前だと思います。
武田さん 来年で46才になりますが、筋肉量は23才ぐらいでした。アスリートは、誰だって失敗を経験していると思います。失敗と捉えるのか、チャレンジと捉えるのかが大切。自分の中の目標に結果がついてきます。チャレンジのあとの気持ち良さを体験して欲しい。
谷口さん クリアしないと強くなれない。私自身、最終選考会で失敗した経験があります。それでも関わり続けるのは、心の中に秘めたことがあるからだと思います。失敗することは悪くないですが、スポーツが続けられなくなってしまう致命傷となり得る失敗は避けておくべきです。
土佐さん 絶対勝てない存在がいると、落ち込んでしまいます。常に不安との戦い。緊張感の体験も、今となっては良かったと思っています。「夢中」を体験できるのが、一番の価値です。
「好きなことをやっているはずなのに、明日が来るのが嫌だった」と、山中先生。
失敗を重ね、練習も厳しく、辛いこともあるけれど。それでもスポーツに関わり続けるのは、挑戦し続ける楽しさ・気持ち良さを知っているから。「夢中」の体験は、生涯の宝になります。
まとめ
いろいろな角度から、スポーツを掘り下げた2時間半。
アスリートのリアルな声を聞き、改めてスポーツの魅力を感じることができました。
失敗することを恐れずに、チャレンジしていくことの楽しさ。
スポーツはもっと身近なもので、誰だって楽しめるもの。
2020年、オリンピックイヤー。
もっとスポーツに関わって、楽しんでいきたいと思いました。
最後にイベント当日の動画をご覧ください!
社会共創学部 地域資源マネジメント学科