「ものをつくる」ということ〜砥部焼アクセサリーAtelier-rhythmkippができるまで〜(前編)

デザイナーの大福さんとはじめて仕事をしたのは、えひめ食べる通信の立ち上げに関わったときでした。


若くて、かわいい女の子。にこにこ笑ってる人。ゆるめ(親近感!笑)。そんな風に思っていたけれど、実際に一緒に仕事をしてみてその印象はガラリと変わった。

笑顔の向こうの、ストイックさ
ものづくりに対する本気度
「妥協」という二文字がない


見た目に反して、全然ゆるくない・・・(笑)!!!

「良いものをつくりたい」その一心で本気の仕事をする、素晴らしいデザイナーです。

いつも笑顔ですが、実は・・・めちゃんこストイック!

それから時が経ち、大福さんから一本のメールが届きました。

砥部焼のアクセサリーブランドを立ち上げるんです〜!

あの大福さんが立ち上げるブランド!絶対素敵にちがいない〜!
嬉々として、見に行かせてもらったら・・・想像とは違うアクセサリーがそこにありました。

標本っぽい!!

これが・・・砥部焼!?

自然のかけらのような、不揃いなパーツ。
なんとも言えない美しさがそこにはありました。

この美しさの理由はなぜだろう?
そこに、大福さんや関わった人たちの作家さんの、ものづくりに対するパッションのようなものがある気がする・・・。

美しいものが美しくある所以
ものをつくるってどういうこと?

私視点で、気になることを根掘り葉掘り聞くインタビューをさせていただきました。

おはなしを聞いた人
RIE DAIFUKU DESIGN 大福理絵さん・・・デザイナー
龍泉窯 池田麻人さん・・・砥部焼作家
和将窯 山本和哉さん・・・砥部焼作家

欲しいモノがこの世にないから

大福さんは、なぜ砥部焼のイヤリングをつくろうと思ったんですか?

私、女子っぽいものが得意じゃないんです。
そのせいか、好みのアクセサリーに巡り合うことがなかなかなくって。いい感じのパーツを見つけたらつくろうって思っていたんです。

そしたら、とある展示会で理想的な着け心地のパーツに巡り合うことができて。
「これは作らないと・・・!!!」ってなりました。

大木さん、ちょっとこのイヤリング着けてもらえますか?

おぉ〜〜!
なんだこのソフトな着け心地は!!!

着けていることを忘れるほどでしょ(笑)?
今まで、イヤリングを着けると耳が痛くなってしまうことが多くて、痛くならないパーツを探してたんです。

そしたら、この吸盤型のアクセサリーと出会いました!

出会いは逃しませんっ!!!

パーツと出会ってしまったからには、アクサリーづくりを進めようと思って。
砥部焼は、龍泉窯の麻人さん、和将窯の山本さんにお願いすることにしたんです。

大福さんって、めっちゃくちゃ見る目が厳しいじゃないですか(笑)
そんな大福さんが、おふたりを選んだってことに、私は興味を持ちました。

麻人さんと山本さんには、大福さんの前職・伊織の展示会で出会ったそうです。
写真は、龍泉窯と和将窯のコラボ作品。

えっ。大福さんって、そんな人だったんですか・・・(怖)!?

フフっ。「自分が欲しいと思うか思わないか」を一番大事にしているので。

おふたりの作品は、そばに置いておきたいと思ったからお願いしました。
人工的すぎない感じ、整いすぎない、自然な感じが好きなんです。

素敵なものはいつまでも愛でます!

これって全部一点ものなんですよね。
すごくいろんな種類があって、楽しいですが・・・どういうイメージでオーダーしたんですか?

基本的に、おふたりの雰囲気そのものが好きなので。完全におまかせしました!

ひぃ〜!ジャッジが厳しい大福さんが、「おまかせ」って・・・だいぶおふたりのことを信頼しているんですね。

見る目がだいぶ厳しめな大福さま

はい。実際に期待以上で・・!いい意味で想像と違ったものができあがって、うれしいです。
おふたりの作品は、外で植物を見つけるたのしみと似た楽しさがあります。

できるだけ「自然」であるということ

陶芸家さんって、精神をすごく集中させてつくっているイメージがあるんですが・・・
麻人さん、山本さんは普段どんな感じで制作をされているんですか?

僕は、集中しすぎない方が、いい感じにできるタイプで。
映画を観ながらつくることも多いです。

よく自然のなかに行くのですが、山でいい景色を見ているときにはぐっと集中して、
つくるときは逆にリラックスしています


できるだけ、自分の手から離れている仕事の方がいいかなって思うんですよね。

先日も、小田深山に行ったり、四万十川の源流に行ったりしました。
いいものを見たら、いいものができあがるんじゃないかな。

さらりと深いことを言う麻人氏

僕は、麻人くんに出会う前は「きちんとしたものをつくらないといけない」と思っていました。
麻人くんの自然な感じでつくるやり方っていうのが、いいなぁと思って、自分にも取り入れていった感じです。

それまでは、「失敗したら失敗」にしてたんです。

でも、麻人くんの
ぐしゃってなったらなったで、いいかたちになる」っていう考え方に触れて、気持ちが変わりました。


自然にできた形がいちばんいい。

麻人さんを褒め続ける山本氏(何も出ません!笑)

お話を聞いていると、3人とも・・・もしかして「自然」が大好きですね!?
大福さんは、普段から自然な場所に行くことが多いんですか?

そうですね〜。小さい頃から、両親にはよく自然の中に連れて行かれてました。
家に石コレクションがあるような家だったんです。

毎年、季節ごとに行く場所が決まっていて。「そろそろ面河に行く時期やな〜」とか、幼心に思っていました。


私、車酔いがひどいかったので。酔ってしまったら車を停めて、自然な空気にふれて回復する・・・というのを繰り返していました。そのときに「自然って、すごいなぁ、気持ちがいいなぁ」って思っていました。


いびつな木とか、高原に咲く花とか・・・
そこに行かないとないやろな〜って思うもの、好きですね。

自然と同化するアクセサリー

今回のアクセサリー。
感覚的には、石ころとか岩石のかけら、山か川に転がっているものをイメージしています。

たしかに・・・!
このアクセサリー、人がつくったけれど、そうじゃない感じがします。
「海辺で拾った貝殻なんだよ」って言われたら、そんな気がしてくる感じ。

さて、どれが葉っぱでどれがアクセサリーでしょう(さすがに分かる)

そう思ってもらえるのが、一番うれしいかも。

僕は、年に1回、穴窯で焼成をするんですが、焼きあがってみないとどうなるか分からないんですよね。自然な形ができるので、より焼き上がりが楽しみなんです。色も、毎年少しずつ違います。把握できないおもしろさがある。

松の木を燃料にするのですが、10月に松を入手して、乾燥させて、夜通し6日間薪をくべ続けるんです。

6日間焼き続けるってすごいですね・・・。
穴窯って、ガス窯や電気窯で焼くのとどう違うんですか?

ガス窯や電気窯での仕上がりを、「光沢・ツヤあり」と表現するならば、
穴窯で焼くものは「マット」な感じでしょうか。

初日から6日目にかけて、少しずつ温度を上げていき、最終的には窯内の温度は1250℃前後になります。
とても原始的な方法ですね。

お話を伺ったあと、穴窯の見学をさせていただきました。とても神聖な現場でした。(大福さん撮影)

言語化できない感覚をたいせつに

山本さんの絵付はどんなイメージで?これもまた自然からのインスピレーションなのでしょうか。

自分のバランスで描いています。
「水の流れみたいですね〜」とか「葉っぱみたい」と言ってくださる方も多いのですが、とくに決めていないんです。

手に取ったお客さんが決めてくれたらいいかなぁって。

実は過去に、「モチーフがないとダメ」って言われたことがあって。
モチーフがないと、販売員さんがお客さんに説明するときに困るんじゃないですかね。

むりやり「葉っぱです」とか、「水の流れをイメージしました」とか、何とでもいえるけれど・・・実際、作品に意図はないんです。

ぎくっ。
私は、職業上なんでも言語化しようとしちゃうんですよね。

「誰にでも伝わるように書かなくちゃ」っていう義務感から、言葉にならないようなことも、むりやり言葉にしちゃう癖があると思います。

アートって、本当は言葉では語れないんだろうな〜。

「なんか、いい」っていう感覚。
それだけでいいのかもしれないですね。

見たもの、経験したことが反映される

ところで!大福事務所には、あやしい図鑑やら、謎の石がたくさん置いてありますが・・・(笑)みなさんはインスピレーションを得るために、いろんなモノを見る習慣があるのでしょうか。

分厚くて、高い、謎の書籍だらけで萌えました

そうですね。
私は、美術館へ行くのが好きで、気になる展示会があれば日本全国、どこでも行きます。
見たいものは、とにかく見る!


たとえば、数年前、椅子の作品展に行ってきたのですが、とても素晴らしくって。
「製作者が“本物”を見てないと、こうはならないだろうな〜」って思ったんです。

こういう素晴らしい作品を見ていると、
普通のものをみると「普通やな〜」って思っちゃう・・・(笑)

出た!
厳しめな大福ジャッジ(笑)!!!

大福さんは、ほんものを見続けているから、そういうのが分かっちゃうんでしょうね。

僕は、王羲之(おうぎし)の書をよく見ます。

作品に王羲之の感覚がほしいって思うんです。

「どういうところが?」と言われたら、説明ができないんですけど、雰囲気とか形・・・ただただかっこいいって思います。

僕は、音楽をよく聴いています。

どんな作品をつくりたいかと問われると、唯一、リズム感があるものを描きたいというのはあるかもしれないですね。

音楽は、楽器だけのインストゥルメンタルばかり聴いています。

麻人くんの作品のように、
自然に溶け込んで、自然の一部になった、最高の状態・・・それを目指してます。

身につけるアート、アクセサリー

アートの価値って、本当に難しいですよね。「美しさの基準」って人それぞれだから。

お金や時間をつかって見に行ったり、
身に着けたり、毎日眺めて、暮らしの中に溶け込ませてみたり・・・

鑑賞する側も、なにかしらエネルギーをつかうと、すっとその価値がわかる瞬間がある気がします。


このアクセサリーは、装飾品というよりアートですね。
絵画を飾る、書を開く、音楽を聴く・・・みたいな要素があるような気がします。

持っている人が、だんだん意味を得られる感じになれたら理想ですね。
きっかけは「なんとなく」でも、年々違うものに見えてくる・・みたいな。

「この時はこう思ってたけれど、今はこう思うな〜」とか
「石とか、亀に見えてたけれど、今は違うな〜」とか。

なるほど。年々価値を帯びてくる。そんなアクセサリーになりそうですね。
ちなみに・・・今更ですが、ブランド名はなんですか?

「atelier_rhythmkipp(アトリエ リズム キップ)」です。
リズムとうたたね。
rhythmは音楽的、律動的なものづくり
kippは単語としての綴りはkipなのですが、pをひとつ足して可愛さを足してます。

キャッチコピーは「つつましい、野生」。

大福さんにむちゃくちゃ嫌がられながら撮影したスリーショット(笑)

おおおおお!!!
鳥肌立ちました。

つつましい、野生かぁ・・・。

まさに、お三方にピッタリなキャッチです。
リリースがとっても楽しみです!

このインタビューを通して、一番感じたのは3人の「自然へのリスペクト」でした。

人はどうして、ものづくりをしたくなるのだろう。

それは、もしかしたら、自然への憧れだったり、自然と一体化したい気持ちの現れなのかもしれません。

言語化できないその感覚を、どうにか言葉にしたくて、私は文章を書き続けます。
大福さんはデザインを。
麻人さん、山本さんは陶芸を。

私自身、このブランドと出会って、3人のお話を聴いて
ものづくりについて深く考えさせられました。

atelier-rhythmkippのアクセサリー・・・受け取った人の人生を変えるかもしれません。

写真 by Lily phote

お知らせ
12/19(日)10:00〜10:30
atelier-rhythmkippのリリース記念として、大福さんと2人でお披露目インスタライブをします!
ぜひ遊びにきてくださいね。

大福さんのInstagram
https://www.instagram.com/riedaifukudesign/

私のInstagram
https://www.instagram.com/ooki_haruna/

atelier-rhythmkipp

https://atelier-rhythmkipp.com/