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普段から、たくさんの方の相談を聞いている松山市市議会議員いけだみえさん。その傾聴力と、的確なアドバイス力を生かしてウェブ上で「人生相談」を行っています。
ご相談がある方は、記事の最後に付けているフォームからどうぞ!
【今回の相談】
相談というより質問です。
前々から、「子ども食堂」について気になっています。松山でどれくらいの数、どのように運営されているんですか?
身近にあるけど見えてない深刻な問題について、行政はどんな事をしてくれているのでしょうか?
“子どもの居場所”がない現代
質問ありがとうです!
「子ども食堂が松山市に、どれくらいあるか?」ということですが、 私、正確な数は分からないんです。なぜなら、子ども食堂って定義も曖昧で、民間のボランティアだから。
運営も、それぞれのやりたい&やれるやり方です。
「子ども食堂」・・・よく耳にしますが、実態はよくわかっていませんでした。
運営は自由なんですね。
子ども食堂がはじまった当初は、食べ物を提供することに対して、 食品衛生法や営業許可等が問題になっていて。 それじゃ、気軽にボランティアで開催できないということで、厳しく言われないことになりました。
今、コロナ感染拡大のなかで、 子ども食堂を運営するのも、 いろいろ悩ましいのでは?と感じてます。
子ども食堂をしている方がFacebookで「竹の子たくさんもらいました!」っていう投稿をしているのを見てから、「こういう場所があることを皆が当たり前に知ってたら、たくさん採れた野菜とか食品を持っていけるよなー」て思っていたんです。
私にできることないかな〜って。
余剰食材の善意な提供についてですが、 えひめフードバンクというところが、余剰食品を慈善事業で提供する活動をしています。
子ども食堂で、消費しやすい品物&量は、その時々や状況で違うと思うので、コミュニケーションしながら提供した方がいいのかな?と、思います。
えひめフードバンクの活動、知りませんでした!!!
この情報も、皆さんに周知されるといいな。
子ども食堂は、「家庭でご飯も満足に食べられない子どもの救済をしたい」と思いついた人がスタートして広がった言葉です。
子ども食堂の活動をボランティアで運営される民間の方々には、本当に頭が下がります。定期的な開催を継続する大変さは、いかほどかと思っています。
一方で子ども食堂が、“子どもの貧困対策”として、認められたり賞賛されることは、嫌だなと思っています。
今、地域のなかでの“子どもの居場所”ってあまりないですよね。駄菓子屋で子どもたちがとん平焼き?みたいなの食べて小腹満たして、大人とおしゃべりしたりするような自然なふれあいの場所、っていうのがない。子ども食堂はそんな感じであって欲しい気持ちがあります。
貧困対策とは私も思いたくないなと思う。みえさんのお気持ちはどういったものでしょうか。
子どもが自由に歩いて(自転車でも)行ける範囲のなかで、 暇な大人が何となくいて(仕事みたいな店番も)、何かしらできるような場所はほとんど無くなったと思います。
TIME isマネーで、駄菓子屋も本屋も成り立たなくなったし、 不審者とか責任問題等々で、 公園で他人の子どもとも遊ぶような人はいなくなりました。
子どもの行動で、目的の分かりにくいこと、行き当たりばったりな感じは、本来は当たり前だと思うんだけど、そんな暮らし方は評価されないし、できにくい。 道草は許されないし、田んぼをのぞき込んでも叱られる恐れがあるのが、現状です。
うっ・・・。たしかに。私の子どもの頃にあったような光景は、今、いっさいないですね。
小学生の息子を見ていても、放課後に友達と公園に遊びに行く・・・っていうようなことが全然ないです。
子どもが、野性的に行動できる生活をしてる家庭は、とても少なくなってると感じてます。 野性的に遊びたくても、場所は少なくて、許される仲間が見つからない。
子ども食堂の活動を知ってから、 子どもキッチンという活動を作りました。友達の家に集まって、暇なママと一緒に料理して食べるっていうイメージです。
気ままに集まって、何となく作って食べる流れにしたかったけれど、 実際は、運営がすごく大変でスタッフみんなが疲れすぎるので、 メニューは事前に決めてから作っています。
なんだか、しあわせな集まりですね!
参加費は無料で、申込不要。遅れて来てもいいし、 料理しなくて食べるだけでもいいってことにして続けていたら、 とても楽しい場になりました。
今はコロナ禍で、リスク管理のため、 事前申込の定員あり、先着順受付で開催しています。
もともとが申し込み不要というのがすごいですね・・・!
子どもの貧困対策は、家庭支援に尽きると思っています。家庭で、本当は必要だけど不足していることを、 社会や行政がすべて補って、子どもの育ちを保障する。 必要だけど、不足しているものは、すべてです。 子どもが、幸せに成長するために、必要なモノ&コトは、とてもたくさんあります。
松山市の貧困世帯は、どのぐらいあるのか?
もうこの流れで泣いてます・・・!
みえさん素敵です!
ところで・・・松山市では、貧困と思われる世帯はどれくらいありますか?
子どもの貧困世帯数ですが、 昨年3月議会で取り上げたので、 良かったら、録画で視聴頂きたいですが、 ↓に、抜粋します。
【質問】
松山市では、これまで子どもの貧困について調査を行っていないようですが、貧困状態で暮らす子どもがいないはずはありません。全国的な子どもの貧困指数が13.9%とすると、平成30年4月1日調査の松山市のゼロ歳から18歳の子どもは8万1,488人、その13.9%は1万1,327人となります。さて、そこで1点目の質問ですが、松山市において生活保護世帯に暮らす子どもの人数、また児童扶養手当を受給する家庭の子どもの人数、さらに就学援助を支給されている子どもの人数は、それぞれ何人いるのでしょうか。
【答弁】西岡英治子ども・子育て担当部長
本市の平成30年4月1日現在での生活保護世帯で暮らす18歳未満の子どもは1,015人、児童扶養手当を受給する家庭の18歳未満の子どもは8,001人、就学援助費を支給されている小学生及び中学生は、平成30年3月31日現在で6,015人となっています。以上でございます。
松山市の行政側では、子どもの貧困の実態を明確に把握していなくて、それが推察される数字を聞いたのが、この質問です。
この後の質問で、具体的な実態を質問して、議会ではじめて、松山市の貧困状態にある子どもの実態を顕在化しました。
子どもの数でいうと1万人以上いると思われます。 世帯数では、約半分として5000世帯位かと推測しています。
質問することで、浮き彫りになってきますね。
子どもの受難でいうと、 貧困のほかに、 虐待や保護者の疾病や障害、そして死亡があり、 差別やいじめ、居場所の問題もあります。子どもの育ちに必要な活動というか仕事は多岐に渡ってありますから、 話せば延々と長く大きくなってしまうのですが。
先ほど、みえさんが言われていた「子どもが、幸せに成長するために、必要なモノ&コトはたくさんある」というワードにハッとしました。
前回の、少子化対策の記事 でも感じたのですが、わたしたちが実際に見たり聴いたりしていることって、氷山の一角だったりするんでしょうね。
“子どもの育ち”に必要なことを社会で保障するには
話題のはじめの方に嫌な話をしましたけど、 子どもに役立つ活動をいいね!っていう話と、子どもの育ちに必要なのに不足して困っているモノ&コトを行政の責任で保障する社会の仕組みにする話は、 分けて話をしたいなぁって、思っているんです。
私はまず、貧困や虐待で苦しんでいる子どもこんなにもいるんだということを、皆が知ることが必要だと思います。 助け合おうとか、そういうきれい事ではなくて、こんな現実があるという事を。 それだけでなく、障がいや性被害、差別などあらゆる問題がすぐ身近にわんさかあるってことに。
市が把握してないことに驚きましたが・・・そんな状態では子育てしやすい街なんて嘘っぱちじゃあああ!!!
そうなんですよ! だけど、残念ながら多くの人は質問者さんのようには感じてくれない。できない・やれない・やるべきじゃない理由や、財源がない、他の支出で削れないから捻出できないと言われてきました。
一言でいうと、「難しいから今は仕方ない」なんです。 立場が違えば、優先したいことが違う、見たいものが違う。
あぁ〜なんだか、もどかしい! でもこれが現実かぁ・・・(遠い目)
だから、私は議場で顕在化させようと思っていて。
最優先で取り組まないといけない子どものことを、 あの手この手、いろいろな言い方で、 発言してきたつもりです。でも、 私が望むより実現はずっとずっと歩みが遅いです。
議会の録画や議事録を拝見して、それはすごく感じています。
立場が違えば、優先したいことが違う、見たいものが違う、気がつかないことは存在しない。 政治って、そういう事なんだと、 常々、思い知らされて、 対応策を試行錯誤しています。
声を大きく、問題提起して、アピールするだけでは、 何十年すごいエネルギーを注いでも、変えられないで来ていることが多いように思いました。
真っ向勝負では、なかなか実現できないってことですよね。
私は、問題認識や共感が広がって、 反対の立場からも、諦めと妥協を引き出すように。賢く、緻密に、現実成果を得られることに、 フォーカスした仕事をしたいんです。
どうしたら現実が改善になるか? どうしたら、改善策をやろうって言わせるか? 実は、いつも考えています。
みえさんのお仕事をするようになって、考え方を少しずつ聞かせていただいて、みえさんがいかに「実現させること」にフォーカスしているかが分かってきはじめました。
主張するだけでも、正論を伝えるだけでもダメなんですよね。
合意形成を図らないといけないから・・・。
貧困世帯側からみたらどう思う?想像力を働かせる
子ども食堂って、とっても深い話ができる話題だなって思います。 子どもの貧困という社会課題に、多くの人が関心を持ち、「自分にも手軽に貢献できるなら」と思わせてくれる、すごい言葉だと思います。でも、貧困世帯の側から、見たらどう感じてるんかな?とも、思うんです。
貧困世帯側からはどう見えるか、それは私も考えます。「恥ずかしい」とか、世間体を考えると思うし。私、買い物するとき、かごの中身が全部半額とかザラにありますけど、今知ってる人に会うの恥ずかしいなと思いますもん。半額に遭遇できてうれしい気持ちがめちゃくちゃあるにしても(笑)。
私は、貧困で困り果てた家庭からSOSをもらって話を聞いた経験があるのですが、本当に深刻な問題や困難を抱えた保護者や子どもは、子ども食堂に行かないんです。
行き詰まって悩んだ挙げ句で、私や子ども総合相談センターなどに連絡した人、保育園や学校から見かねて役所へ連絡が入った家庭は、子ども食堂では問題は解決(改善)は望めないし、子ども食堂にはそういう役割じゃない。子ども食堂の良し悪しではなくて、子ども食堂で善意取り組みがあることで、貧困対策が誤魔化されている感じがして、嫌なんです。
なるほど、とてもわかります。対策ではないのに、カバーしてる感じに思えますよね。 公助ですべき事はもっと突っ込んだことでなくては。
上手く言えなくて申し訳ないんですけど、 子どもの貧困対策をきっちりやってないことを 普通の有権者が問題にしたくなる気持ちになりそうなところ、 子ども食堂に協力する人たちがいることで気持ちが落ち着くみたいな感じです。
子どもキッチンはとてもいい取り組みだといつも思っています。食品の安全が揺らいでいる事や、母親が食事を作る事が当たり前という意識を変えていく事などにもつながっていきますね。対策にはならなくてももっともっと広がってほしい!
みえさんが子どもの受難についてとても考えてくださっている事がよくわかって少し安心です。気がつかない事は存在しない、つらい言葉です。そのこと、ものがどこから始まっているかを想像する… 政治に関わる人も想像力を働かせて欲しいなあ。
貧困を深刻化させないために
みえさんが切羽詰まった貧困世帯から相談を受けたときは、どのような対応をされたか、差し支えなければ聞いてみたいです。
体を痛めて仕事ができなくなって、妻と子どもを養えなくて離婚して、冬に車で生活していた男性には、生活保護の手続きするように勧め、窓口で説明することと家探しを手伝いました。 あとは、生活福祉課が衣食住を整える支援をしてくれたので、 落ち着く生活になりました。 その後、 彼は船舶の免許をとって、船乗りとして働いて、元嫁と子どもにも仕送りもしてるそうです。
そんな現実が松山にも。
ほかにもあります。DVの夫と別れることはできたけれど、精神的に不安定でパートも続かず、2人の子どもとの生活に行き詰まっていると相談され、生活保護を勧めました。 2人の子どもたちが母親を支えながら落ち着いた生活になりました。 母親も介護職に就いて、子どもは大学進学もできました。
知らないだけで、いろいろな事例があるのですね。
本当は、誰だって、仕事や病気やトラブルにあって、 貧困状態に陥ってしまう可能性は、あります。 本人だけ大人だけでも、困難だけど、 そこに子どもがいたら、 貧困が深刻になるのは早いし、 子どもの成長や人生に影響するから、 急いで救済すべきです。困っている当事者の人たちは、 何が問題なのか分かってかなったり、相談すべきタイミングや、相手が分からないことがほとんどです。 そもそも、問題が分かって対処できたり、相談すべき時に相談できる人がいたら、困窮しません。
当事者になると、何も考えられず絶望を感じてしまいそうです。
相談とか支援を提供したいと思うときは、 当事者さんがみじめな気持ちにならない、はずかしいとか、情けないと思うことへの配慮をやりすぎるくらいしていないと成功しないって思うんです。
ガンは「早期発見早期治療」と言って、 予防と検診に予算をたくさん投入してるんだから、 子どもの受難については、 もっと早期に使えるやさしいサービス充実させておいた方が、 社会的にもコスパがよいと思います。
早期にやさしいサービスに投資すればもっと良い環境になると思います。誰でも、いつでも貧困に陥る可能性があるんですよね。なかなかそのことには怖くて向き合えない。だからそうならないように慎重に生きていて我慢していたり。苦しいなあ。
私が貧困について考えるきっかけになったのは、ふと見かけて手にした『どんとこい、貧困!』って本だったんですよ。 何か面白い節約ネタとか紹介してる本なのかしら?と思ったら、がっつり貧困問題を考える良書でした。
おー、良書! 嬉しいですー。 湯浅誠さんの本や書き物、色々読んでるつもりだったけれど、 こんな親しみやすい本は、 知りませんでした。
ジュニア向けの本なので、まわりの人にすすめやすい一冊です。
子ども食堂をきっかけに、いろいろなことを考えることができました。松山市の貧困対策はイマイチだと思いましたが、みえさんが考えていることを知ることができて、よかったです。
私は、深刻な問題を率直にリアルに話題にできる機会にさせてもらえて、とてもうれしく、ありがかったです。 支援が足りなくて困難のなかでがんばって生きてくれている子どもたちのことや、困窮したときに相談してくれたみなさんから学ばせてもらったことを想いながら、政治家としての仕事に取り組んでいきます。
子どもを応援する気運づくり
子ども食堂という言葉をきっかけに、すっかり子どもの受難と支援策って話題にしてしまいましたが、、子ども食堂を開催してくださっている方々は、民間でそして公的な支援がほとんどない状態で地域の子どもたちに少しでもきっかけや居場所を提供しようと、奮闘してくださっていて、ありがたいことで、すばらしいと思っています。開催を重ねて、色々な経験から学んで工夫や考え方を持たれていると思います。 子どもとスタッフのふれあいから、関係性を作って、頼れる場所になって下さっていることも、事実です。
子どもキッチンは、自画自賛になるからひかえていますけど、我ながら、すごい仕組みにできたなと思っています。 このシステムを各学校の調理室で、毎週土日に開催できたら、いいのにと思っています。スタッフの休日に有償ボランティアで開催しているから、 日程と事務運営の面から、 年間15回位の開催で限界です。 市内の子どもたちに充分には、提供できないんです。 それに、コムズっていう恵まれた施設だから、できます。 公民館でも、理解があればできると思います。参考にしたいと、何人も見学に来てくださったのですが、 実施してくださった人は、まだいません。
明石市は、小学校区に一つ以上の子ども食堂を作りたいと市長が目標を掲げて、民間で継続的に開催してくれるグループを手挙げ方式で募集して、市も運営費の一部や会場、広報などを支援してて、 子どもと地域が同じ釜の飯を食う、触れあって信頼関係を作って、子どもを応援する気運を醸成しています。
明石市すごいですね!
文京区は、子ども宅食という ネーミングで、家庭に食品等々届ける取り組みをしています。困窮する子育て世帯に支援を届けるには、行政の持っている個人情報を利用しないと、難しいんです。心ある民間人と行政が提携して、多くの市民の善意を上手くもれなく合理的に、必要な家庭に支援を届けられる仕組みを実現したいと思っています。
そうですね。行政も動かないと、根本的な解決には向かわないですよね。
そういうことに税金を投入することは、経済対策にもちゃんとなると思っています。 今は、「景気のための経済対策」というと、どんなことをすることを思い浮かべるでしょうか?
土木事業が、主だった時代もあります。GoToも経済支援策。でも、困っている人、貧しい人に税金を使えば、必ず地域で使うのだから経済循環には一番良いはずなんですよ。
目先のことだけを考えず、地域にとって何が本当に必要なことなのか? ちゃんと考えることが大切ですね。
「知らない」こと「問題から目を背けること」が、一番怖いです。
今回は、「子ども食堂」を通じて、松山の現状・問題点を知ることができてよかったです。
まだまだ知らないことだらけですが、私もこのコーナーを通じて、学ばせてくださいね。
みえさんに相談したい「人生のお悩み」募集中!
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※採用の有無に関する結果は、記事掲載に変えさせていただきます。
いけだみえ