自分が生きやすい「まち」をつくるために

「東京から内子にやってきた地域おこし協力隊の若い男の子が、書店をしているらしい」
「30歳に内子を牛耳るって言っているらしい」
「しかも、現役東大生らしい」※現在は卒業してます!

そんな噂から、どい書店・おかやまくんのことを知った私。

え!?「内子牛耳る」って・・・(汗)
牛耳るっていう意味わかってる? 東大生なんだよね!?

最初は正直、こんな感想を持ってしまいました(ゴメンネ!)。

その後、割とすぐに本人とご対面するのですが、ギラギラした若者かと思いきや・・・イメージと違って「ゆるふわ」(笑)なんか、ほわ〜んとしていて、クネクネしているのです。

何度か、イベントにも呼んでいただいて、岡山くんの企画で登壇をさせてもらったこともあるのだけれど、その時も始終、ほんわりしてました(笑)

このライブ配信のときは、「おかやまくん、寝てたよね!?」疑惑が浮上するぐらい(笑)

でも、しゃべると、サクっとすごいことを言う。

どい書店のコンセプト、「おばちゃんちよりもおばあちゃんち」って、めちゃくちゃ素晴らしいキャッチコピーだと思うし、おかやまくんが内子町の小田に移住してから、たくさんの若者が小田地区に移住していているのです。

おかやまくんって、本当はすごい人なんだろうな〜

そんなおかやまくんの秘密を暴くべく、インタビューをさせてもらったのですが・・・想像以上に、すごい人だった。ビジョンがすごすぎる。そして、しっかりダメ人間(←ディスってないよ。褒めてます)。これからの、あたらしい田舎の在り方をつくっていく人なんだろうなぁと、しみじみ感じました。

そんなわけでっ! むちゃくちゃ難解な、おかやまくんという人間・・・「どい書店」でやろうとしていることが、少しでも伝わるとうれしいです。

内子町小田へ移住したきっかけ

「内子を牛耳る」という、地元民を究極にザワつかせるパワーワードを放ちながら(笑)、内子町の地域おこし協力隊として小田にやって来たおかやまくん。「地域おこし」というと、「“地域を盛り上げること”をワークライフとして取り組みたい」と思っている人が多い印象です。

おかやまくんって、なんで小田に移住したの?

僕は、圧倒的に「頑張れない」タイプなんです。自分が納得できないことは、モチベーションが下がってできなくなってしまって。生活すら放棄してしまうんですよね・・・。

東京にいた頃は、2日間、家から出ずに携帯さわっているときもありました。バイト中に寝てしまったりとか。何をやっても、社会に適合できなくって。

東京時代のおかやまくんの部屋。荒れてます!

わぁ〜お!まぁまぁ汚いね(笑)
そんな暮らしを送っていたおかやまくんが、どうやって小田に辿りついたの?

僕は、大学院で都市工学を専攻していたんですが、2017年にフィールドワークで内子町を訪れたんです。

そのときに、「内子は田舎の雰囲気が違う」って感じたんですよね。「日本の田舎でもまだ元気なところがあるんだ」と感動をくれたのが内子町であり、小田地区だったんです。

当時、都会暮らしをしながら「社会で当たり前に起こっていること」に疑問を持っていました。化学的で安い建材ばかり使っているのに9万5000円のワンルーム、添加物たっぷりのコンビニ弁当、上司のしょうもないダメ出し・・・。大量生産・大量消費を良しとする経済主義。

そういうのに、疑問を感じて生きていました。


どい書店は10LDKですが、家賃は半額以下。

いろんな年代の方がいて、生きているだけで、若いってだけで、おじいちゃんやおばあちゃんが「えらいねぇ〜」「すごいねぇ」って褒めてくれる(笑)

あ〜なんかわかるかも。
私も田舎育ちだから。
よく、歩いているだけで、近所のおばあちゃんに「おせらしゅうなって〜(大きくなって)」って褒められたな。

「おせらしい」って方言らしいですね。わかりますか!?

東京に住んでいたときは、いつも「できない自分」を責めていたんです。でも、叱ってくる大人のことを尊敬できるかというと…そうではなかった。8時半から17時まで出社して、疲れた顔で家に帰ってくる。そんな大人にはなりたくないって思ったし、サラリーマンという仕組み自体おかしいなって。

たしかになぁ〜。尊敬できる大人がいないと、仕事が嫌になっちゃうし、人生にも絶望するかも。そういうタイミングに小田と出会ってしまったんですね。

そうなんです。
小田のまちでなら、自分のペースで生きていける社会をつくることができるかもしれない。


僕みたいな社会不適合者も、受け入れてくれる度量がある。自分が感じた、「世の中、こんな感じにした方がいいんじゃないの?」といったものをここで示したい。

そう思ったんです。

なるほど・・・それで、「内子を牛耳りたい」という言葉が生まれたのね。

はい・・・。あの言葉は、インパクトが強すぎるみたいで(汗)、今はあまり使っていませんが気持ちは変わっていません!

本気で、地域を変えたいと思っています。
それは、自分のためだったり、これまで地域を支えていた先人たちへの恩返しだったり、これからの若者のためだったりします。

なるほど・・・そういう意味だったのか。
ごめんね。完全に誤解してた。

若者が暮らしやすいまちとは?

田舎に住むと、人間関係が濃厚になりすぎて、しんどくなったりしませんか?
誰がどこに行ったとか、筒抜けになってしまうイメージがあります。「みんな家族」みたいな・・・。都会育ちだと、そこらへんのギャップを感じちゃう気がするのですが。

田舎のご近所さんとの付き合いよりも、都会での付き合いの方がめんどうくさい場合もあると思います。都会は、時間が守られなかったり、ルールを守れない、いわゆる「社会性がない人」を毛嫌いしている気がします。そういう人はめんどくさがられてしまう。

たしかに。コミュニケーションが円滑にできない人とは関わりたくない風潮、ありますよね。できない人や苦手な人を見て、ダメ人間のように扱う人もいますよね。そういう人に関わると、「自分ってダメなのかなぁ・・・」って落ち込んでしまったり、価値のない人間に思えてしまったり。

そう考えると、田舎のいろんな年代、考え方の人たちと過ごすのは、自分を受け入れてもらっている感じがして、自己肯定感が高まる気がする・・・。

ただ、現在の田舎はかなり若者が暮らしにくくなっています。仕事はあっても、若者が憧れを持つような職場がなかったり、暮らすにはコンビニがなかったり、虫がでやすいなど不便な印象があったり。

だから、若者たちが暮らしやすい田舎をつくるために、若者が「住んでて楽しいまち」をつくりたかった。ショッピングセンターや映画館、カラオケのように娯楽施設でお金を使わなくても、近所のみんなで集まって、好きな映画の鑑賞会をしたり、週に1回ご飯会をしたり、毎日のようにふらっと行ったら、誰かがいてなんでも話せる、みたいな場所をつくりたかったんです。

思い返すと、学生時代の部活の帰り道って、なんでか知らないけど、楽しかった印象があって。楽しいって、お金や便利さじゃなくて、仲間がいることなのかなと。部活やサークル、研究室の友達のような間柄が毎日の暮らしの中に入っていたら、お金をかけなくても楽しい。だから新しく来た若者が、地元のおいちゃんたちとも気軽に話せるような場をつくりたかったんです。

地元と他所から来た若者が出会う場を作るには、山奥よりも適度に人が集まっている商店街がよかったんです。皆さんに見えやすい場所でやれば、口コミも広まりやすいかと思い、小田地区の中央商店街で空き家になっていた本屋「土居書店」での活動を始めました。

なるほど・・・ちゃんと計算しての「小田」の中心地なんですね。

田舎の維持が危ない

今、田舎の維持が非常に危うい状況なんです。おじいちゃんたちとしゃべっていたら、「昔に比べて川が濁った」って言うんです。

それはなぜかというと、森に保水力がなくなっているから。どんぐりの木みたいな雑木がしっかりあれば、雨水をたくわえることができて、土砂崩れやゲリラ豪雨もこんなに起こらないはずなんです。

小田の風景です

自然が豊かな小田ですら、そんな状況なんですね。

そうです。

だから僕は、小田の里山を守りたいって思っています。
里山を守ることで、災害の予防にもなるし、観光資源にもなる。

地域創生って、箱モノをつくったり、イベントをして集客するだけじゃないと思っています。むしろ、美しい里山を育んでいくことの方が大切なことだと思います。小田や内子を里山や森を使いこなせる人がたくさんいるまちにしたいです。

おかやまくんって、本当に田舎の未来のことを考えているんだね。

なんか、「ゆるふわ」とか言っちゃってごめんなさい(笑)

ところで、おかやまくんはいくつか古民家を管理していますが、これも田舎を守るためですか?

そうです。どい書店があるのは小田中央商店街ですが、田舎にある商店街って「うるおいのシンボル」なんです。

「田畑を耕さないでも生きていける」くらい文化が醸成されていた証拠なので。

でも、今はその商店街が残しにくい世の中です。
老朽化した建物は、維持するよりも放置や解体のほうが、お金も手間もかかりません。

どい書店はこんなかんじ!古民家のよさが感じられる空間です。

古民家は寒いし、耐震とかもちゃんとしようと思ったら、かなりお金がかかりそうですもんね。

僕は古民家が好きなんです。
今から新しくつくろうと思っても、つくれないもの。どい書店のガラスなんて、今から買おうと思っても買えません。

「今」を逃したら、今後取り返しのつかないことってたくさんあります。
だから残したいんです。

僕は、内子町の町並み保存に深く関わってきた岡田文淑さんのことを尊敬しているんですが、岡田さんはちゃんと町並みを残してきました。それにはたくさんのご苦労もあったと思いますが、そのおかげで今、内子には美しい風景が残っています。

経済的にはどんな感じなのでしょうか?
まちづくりも、結局のところは「いかに経済効果を生み出すか」が問われていますよね。

僕は、そもそも「まちづくり」ってお金のためにやるものじゃないって思っています。20年、30年後暮らしやすいまちをつくるために、どうしたらいいかっていうのを日々取り組むことがまちづくりで。

その結果として、経済がついてくる。

人って、お金以上に感動がうまれたときに「価値」を感じると思うんですよね。
たとえば、「こんなに美味しいのに80円ですか!?」みたいな感じです。それが、里山のおもてなし文化だと思ってます。

経済的価値は今後どんどん下がってくると思うので。目先の経済よりも、「今、本当に大事なことはなにか」を見極めることが大切ですよね。

本当の「豊かさ」とは?

すごいなぁ〜・・・
なんでそこまで、地元でもない小田のまちづくりに本気なの!?

僕は、20代前半まで、自分の想ったことを我慢してきました。我慢することで、自分がやりたいことや好きなものがわからなくなる気がしました。でも、全世界70億人いるんだし、一人ぐらい我慢せずに自分の感覚に素直に生きてもいいんじゃないかって思うようになったんです。どうせ人生短いんだから言いたいこと言った方が、うんとおもしろいんじゃないかな?って。

若くして悟りましたね・・・!

東京の同期は、今もしかしたら平均年収1000万とか超えているかもしれない。大企業に就職して活躍している人もいると思うけれど、そんななか、一人ぐらいなんか適当なことやってもいいのかなって。

人生かけて大きなことやりたい」っていうアホみたいな、厨二病みたいなところもあるんですが、どうせ社会不適合者だからこそ、理想をギャーギャー言って、「またこいつ、何かわめいてるな〜」って言われてもいい、そのなかでたまにアタリが出たらいいかなぁなんて。

ちゃんと覚悟が決まってるんだね。

ただ、僕、今はインタビュー中なので、ちゃんとしたこと言っているように見えますけど、一人になると弱いんで。夜通しYouTube見てしまって、起きるの昼っていう日もザラなんですけどね・・・そこらへん、やっぱり社会不適合者なんです(笑)

たまに眠そうなときは、ほんとに寝てないんやね(笑)

はい・・・。僕の生活を編集してください(笑)

でも、こんな僕のような人でも、生きやすい社会をつくりたいって本気で思っています。
今、世の中の悩みってほぼ人間関係だと思うんですが、自然とふれあっていると、世の中の悩みに対してどうでもよくなるんです。「何があってもいいやん」って。

本当の「豊かさ」って、そういうことだと思うんですよね。

「生きているからには子孫を残したい」っていうのは、人の本能だと思うんですが、僕はこの世界をよい形でバトンタッチしたい。そのまま渡したくないんです。

先延ばしにすればするほど、やりづらくなると思います。

だから、今、動きたいと思っています。

おかやまくんの知性があふれたインタビュー。ここまで深く、未来のことを考えている若者に私は出会ったことがない。「地域おこし」って、「地域のために」という「貢献」に向かいがちな分野ですが、ベクトルがあくまで「自分」なのもすごくいい。

社会不適合者って、一体なんなんだろう。そしてそれを排除すればするほど、世の中ってつまらなくなる。そんな気がする。それは、田舎を残すこととしっかりつながっている。

めちゃくちゃ深いおかやまくんの思考。その入り口の部分をのぞくことができたインタビューでした。

さて、次回の記事では、おかやまくんの「せいかつ編集」について書かせてもらいます!
やりたいことがたくさんあるのに、時間の使い方が下手と言っているおかやまくん。
どんな「せいかつ編集」になったのか・・・

ぜひこちらの記事もお読みください。


撮影:水本 誠時