「ものをつくる」ということ〜砥部焼アクセサリーatelier-rhythmkippができるまで〜後編

砥部焼アクセサリーブランドatelier-rhythmkippができるまでを通じて、「ものをつくる」ということを考える記事、後編をお届けします。

▼前回の記事はこちら

今回ご登場いただくのは、前回に引き続きatelier-rhythmkippの主宰、デザイナー RIE DAIFUKU DESIGN大福さんと、西条市で特注家具制作やDIYサポート、木工体験ワークショップをされている工房オクノホソミチ の奥涼介さんです。

商品ではなく、「作品」として世に広めていくために

奥さんは、atelier-rhythmkippのアクセサリーを収納する箱をつくられたんですよね。
収納ボックスまでつくっちゃうのが大福さんらしいですが・・・なぜ、つくろうと思ったんですか?

イヤリングやピアスって、台紙に載せて販売していることが多いと思うのですが、そうなるとどうしても「商品感」が出ちゃうんですよね。

今回のアクセサリーは、商品ではなく「作品」として販売したかったので、作品にふさわしい入れ物を用意したかったんです。

標本感!! 博物館に飾られていても、違和感がありません。

うーん・・・美しいですね。アクセサリーのよさが、さらに際立ちます!
フチのしつらえも、しみじみうつくしい!

ピッタリ45度にカットして、額縁を作るような感じでつくりました。
釘やビスなどの金具は使っていなくて、木と接着剤だけですっきりと見えるように設計しています。

しかも、これ、スタッキングができるんですよ〜♪
重ねて持ち運びができるから便利です。

うぉ〜!ピッタリ重ねられるの萌えます!
木工の世界ってむちゃくちゃ仕事が細かいですよね。
奥さんはもともと手先が器用だったんですか?

僕はもともとモーターショーの車をつくる仕事をしていたんです。
小数点二桁のレベルで、細かい仕事が求められる世界。鍛えられました。

「ここまでせんでもええやろ〜」となってしまうところを、もう一踏ん張りするのが僕の仕事です。細かいところがあとから作用してくるので。

すごいなぁ。ザツな私には絶対無理だ〜。

ちなみに、この机も奥さんにつくってもらったんです。
サンコーのコンテナを愛用しているので、これがピッタリ入るよう設計してもらったんですよ。

さすが「ほしいもの」しか持たない大福さん(笑)

机の足の部分はタイヤにしたかったんですけど、ホームセンターで買い物をしているときに、台車についているタイヤがどんぴしゃなことに気がついて。すぐに奥さんに写真を送りました。「これだ〜!」って。

奥さんもおすすめタイヤ候補数種を探してくれて、いろいろ検証、吟味したうえで、やっぱり最初に見つけた台車のにしよう。ってなりました。

そうなんです。いろいろ探したんですが、見つからなくて。
最終的にホームセンターで台車を購入して、タイヤの部分だけ取りました。

台車からもぎ取られたタイヤ。台車は正しく使いましょう・・・。

台車って、そうやって使うんだっけ・・・(汗)
とにかく、おふたりとも、本当〜に妥協しないんですね。
私だったら、既存のもので諦めると思います。

インプットの質で「ものづくり」が深まる

ところで、おふたりはどうやって出会ったんですか?
ふたりを見ていると、まるで気の合う女友達みたいですね。

共通の知人がいて、「合うと思うよ〜」って紹介されたのがきっかけです。
出会ってすぐに喫茶店で4〜5時間話し込んだんですよ〜(笑)

何をそんなに話すことがあるですか(汗)

求めている情報の種類が一緒なんです。
「これ面白いな!」と思ったら、「大福さんも面白がるにちがいない」と思ってすぐに連絡します。

たとえば、トークショーの情報とか、最近見たドキュメンタリーや本の感想とか。
ものづくりとかデザイン、コンセプトに関するものが多いですかね。

この二人の会話・・・雰囲気は女子会ですが、内容は完全なるオタクです。

美術館同様、「いいな〜」って思ったら即行動で本とかサクっと買うんですけど、持ってる本が奥さんと結構被ってます(笑)

本だけじゃなく、奥会津の木地師の生活を再現したドキュメンタリーの上映会があったのですが、そこでも奥さんと遭遇しました。55分のドキュメンタリーなんですが、その半分が「小屋づくり」で占められているという、なんともシュールな映像で・・。

え。なんか凄まじいドキュメンタリーですね。

結局、ものづくりって「インプットの質」だと思うんですよね。
ものづくりに関わらず、いろいろな歴史や考え方を吸収することがおもしろくて。

今回のアクセサリーづくりでは、
アクセサリーの歴史についても考えました。

古代のアクセサリーは、貝殻だったんだなぁ〜とか。
毒殺用につくられた指輪もあったのか〜とか。

そういえば、大福さんと「たべる通信」に関わったとき
デザインをするために、大福さんが図鑑を読んだり、いろんな文献引っ張り出してきてたことを思い出しました。

いったんモノの「原点」に遡ってから、デザインしているんですね。

行き詰まったら、山に行く!

おふたりは、ものづくりにおけるMYルールってありますか?

「やりたくないときは、やらない」ですかね。
心の余裕がなくなると考える力がなくなっちゃうので。

わかります〜。一緒です〜!

そういう時は、どうやって心の回復を図るんですか?

行き詰まったら、考えなくてもいいようなことをします(笑)。例えば、工房の整理をしたり、自分で使うものを作ったり。

私は、本屋か山ですね〜。

へ〜!私が同じことやったら、山に行って帰って来れなさそう・・・。
「こっちの方が楽しいやー」って。

私も、「やりたいくない」気持ちが生まれたときに原稿書いちゃうと、それが全部出ちゃうから、書かないようにしているんです。
でもそのせいで、締め切り破ってしまったり・・・(この原稿も。ボソっ)いつも迷惑かけてます(涙)

私は、「やる気出ないな〜」って思ったらサッサと山に行って、早めに解決するようにしてます。山から帰ってきたら、スムーズにデザインできるようになっているんです。
そして、締め切りは守ります(キッパリ)!

しめきりは守る!それが大福さん!カッコいい・・・(遠い目)

すげ〜〜〜。私もそうありたい・・・。

人はなぜ「美しいもの」に惹かれるのか

ところで・・・よく見たら、箱の色が微妙にちがいますね。
素材が違うのですか?

はい。いろんな木をつかっていて、たとえば、栗の木を鉄で媒染した木でつくっていたり、北米の古材を使っていたり。

これは、ロッキー山脈の麓で雪崩防止のために使われていた木なんです。
ノコの目が面白いでしょ?今の機械ではこうはならないんですよ!

奥さん、めっちゃイキイキしてますね(笑)
古材がもともとお好きなんですか?

バックパッカーをしていたことがあるんですが、海外の「アップサイクル」の取り組みがいいなぁって思ったんです。建築廃材を家具にしたり、古テントをバックにしたり、タイヤのチューブを小銭入れにしたり。元のものより価値のあるものとして再利用しているんですね。

時間を経ることで築かれた美しさは、人の手や機械では再現できない価値があります。
このロッキー山脈の古材も、アクセサリーを入れる箱に仕上げますよ〜。

わ〜楽しみです!

イキイキと古材について語る奥さん。なんのポーズ(笑)?

木に節があると、普通はそれを避けようとしてしますよね。

でも、
節があるからいいんです
穴が空いているからいいんです
カビがあるからいいんですよ〜〜!

先日見つけた木なんて、木目に沿ってカビが生えていて、まるでゴルゴンゾーラチーズみたい。
上品なお菓子みたいな木だなぁと。

それこそ、自然のなかにある「美」であり「芸術」ですよね。
決して人の手では生み出せない美しさ!

Atelier-rhythmkippのキャッチコピーを「つつましい野生」としたのも、そういったありのままの自然を表現したかったからなんです。

ありのままの岩だったり、動物のような感じだったり。
山にいそうな男性のファッションにも似合うような・・・。

なるほど〜!
それで、奥さんがモデルしてるんですね〜。

野生みあふれる奥さん(笑)詳しくはウェブショップへ!

人って、「美しいものが見たい」と思う生き物なんでしょうね。
だから、最初は貝殻とか木の枝とか、
近くにある美しい自然をつかったアクセサリーが生まれた。

Atelier-rhythmkippのアクセサリーは、「美しいものが見たい」という気持ちが満々に込められている気がします。

まさに、アクセサリーの原点に戻った作品なのかも。

ものづくり魂のおまもり

さて・・・先ほどからウズウズしているのですが、イヤリングの試着をさせてもらってのいいでしょうか!

ど〜ぞど〜ぞ!

かれこれ1時間ぐらい試着しまくりました・・・。

やばい・・・一日中試着していられそう。
Atelier-rhythmkippのアクセサリー、たのしいです。
どれも、違ったよさがあって選べません(笑)

選ぶのも楽しいでしょ〜。
じっくり選んでくださいね♪

Atelier-rhythmkippのオンラインショップ、とうとう完成しました!

ぜひこちらで、つつましい野生のお買い物を楽しんでくださいね。
大福さんともお披露目ライブ配信を行いましたよ〜♪

そして、私も悩みに悩みまくって・・・イヤリングを購入しましたっ。
むちゃくちゃ悩みました。

奥さんの箱も一緒に購入して、少しずつコレクションしていきたいぐらいです。レポート書いたのでぜひ絵日記もご覧くださいね〜♪

作品そのものの素晴らしさはもちろんですが、今回私はこのアクセサリーに「ものづくり魂のおまもり」のようなものを感じました。

大福さん、麻人さん、山本さん、奥さん、それぞれの「ものづくり」の魂のようなものに触れて
ものづくりの原点が「自然へのリスペクト」であるとうこと。そして、それは人間的の本能的な部分なのかもしれない・・・ということに気付かされました。

私も、情報発信という名の「ものづくり」をする人間です。

Atelier-rhythmkippのアクセサリーで「つつましい野生」のパワーを借りながら、存分にものづくりを楽しむ人生でありたいなと思いました。

photo by mimozaphotograph

1月下旬 Atelier-rhythmkippお披露目イベント「ものづくり対談」開催します!
大福事務所にて、Atelier-rhythmkippのお披露目イベントを開催予定。
この記事でご紹介させていただいたAtelier-rhythmkipp制作メンバー勢ぞろいで、「ものづくり」についてお話しするトークショーを企画します。またSNS等でご案内しますので、ぜひチェックしてくださいね。