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私が路地裏珈琲を知ったのは、何時ごろだろう…。もしかしたら、お店ができたオープンした直後だったのかもしれない。静かに仕事ができる場所がほしくて、「おや?ここは、仕事をするカフェとして使えそうだ!」と感じて訪れたのがきっかけだったように思う。
Wi-Fiもあって、コンセントもあって、静かに仕事できるカフェは、ここ松山では希有な存在。それでいて、珈琲がむちゃくちゃおいしい。私は、プリンを一緒に注文して食べることが多いのだけど(気に入るとそればっかり注文するタイプです。笑)。
さりげなく、フィットしてくれる味というか…。繊細に、今の私に寄り添ってくれる味。この一杯から、底なしの情熱が感じられるのです。
この味のヒミツを知りたいと思いながらも、
いつも静かに仕事をさせていただく場所。
店主とはオーダーや会計時に、ひとことふたこと言葉を交わす程度だったのですが、ひょんなきっかけで、今までのこと、コーヒーのことを聴く機会がやってきたのです。
そんなわけで、今回は、店主の攝津さんによるコーヒーへの情熱について書かせていただきます!
コーヒーは特別な飲み物
攝津さんはお店を開く前も、ずっとコーヒーのことをやってきたのですか?
いいえ。もともとは漠然とデザイナーとか将来的には芸術家のようなことをしたいなーと思っていたのですが、親の意向もあって約10年間、郵便局で働いていました。
へ~!意外です。
その後、保険会社や不動産鑑定事務所で働き、システムエンジニア、デザイナーとして独立しました。システム構築はもちろん、Web・チラシ・名刺デザインや、何でも屋みたいな仕事を10年ぐらいしていました。
おぉ~。言われてみれば、エンジニアさんっぽい雰囲気かも(笑)!
エンジニア・デザイナーの時代は、とても忙しくさせてもらっていたのですが、睡眠時間が僅かしかない日々。頭痛や肩こりが慢性化して…仕事に線引きをする意味合いで、職業訓練校を開くことにしたんです。ワード、エクセル、パワポ、グラフィック、マーケティング、コミュニケーションスキル、ビジネスマナー、これまで経験してきたことを教える立場に転向しました。
コミュニケーションスキルも教えられてたんですね!?
そうです。せっかく知識や技術があっても、コミュニケーション力がないと仕事を続けることが難しい場合があります。生徒さんにはその重要性を感じていただき、グループワークにより、しっかりと身に付けていただくことに努めました。
そうしていると、ご縁があって「通信制の学校をつくらないか」という話がきたんです。職業訓練中に沸き起こっていた「コミュニケーションスキルを社会で出る前につけてあげたい」「その人が望む人生を歩むためのサポートをしたい」という想いを実現できるのではないかと思い、引き受けることにしました。
攝津さんにそんな過去があったとは!!!で、学校はどうなったのですか?
それが…学校は認可制度なのですが、関東にある本校が愛媛県の許可がなかなか下りなくて、流れてしまったんです。
学校をするために、職業訓練校は閉じてしまっていたのでどうしようかと思ってましたが、これまでカフェの立ち上げや飲食店のサポートをしていたことがあったので、カフェをやってみようと。
学校の話がなければ、この流れにはならなかったかもしれませんね。
へ~!!!おもしろい!なぜカフェだったんですか?
コーヒーって特別な飲み物かなと思います。仕事中だったり、なにかが一段落したタイミングだったり、なにかをスタートするタイミングだったり。様々な人の日常のなかに、いつもコーヒーがありますよね。(多分?)「最高においしいコーヒーが飲みたい」。そんな気持ちで、以前からコーヒーについて研究してたんですよ。
農園からはじまる、コーヒー豆のリレー
そして、路地裏珈琲をオープンさせることにしたんですね。それがいつ頃ですか?なぜWi-Fi・コンセント完備のカフェにしようと思ったのですか?
オープンしたのは、2015年の7月です。フリーのエンジニアとして長年働いていたので、当時しばしば「街中で作業したいな」と思うタイミングがあったんです。でも、当時はWi-Fiのあるお店が少なかった。自分が欲しいお店を…と考えて、今のスタイルになりました。
攝津さんはコーヒーへのこだわりが半端ないと感じているのですが、コーヒーの研究はどうやってされたのですか?
私は、研究しはじめたらかなりマニアックなので・・・。どうすれば、おいしいコーヒーがつくれるのか、かなり研究しました。まず、コーヒーって農園からはじまっていると思うんです。
農園!?
コーヒー豆がつくられる農園です。コーヒーっていろんなお店で淹れられていますが、そのお店が開発しているわけではなく・・・コーヒー豆農家さんが育ててつくられているんです。
素材そのものが持っている力強さを、きちんとしたアレンジで、お客さまに届けること。ちゃんとバトンを渡すことが、私の仕事だと思っています。
なるほど…そこまで考えたことはなかった!
最初のほうにお話しした「何でも屋時代」に、理想の味を求めていろんなコーヒーを飲みました。そのなかで、とある焙煎士さんから取り寄せたコーヒーが私の求める味で衝撃を受けたんです。すっきりしているけれど、しっかりと「コーヒー」で。「お店をするなら、こんな焙煎をしたい」、そう強く感じました。
手間がかかっても手焙煎する理由
攝津さんのお店には焙煎機がないですが、自家焙煎なんですよね!?どうやって焙煎されているんですか?焙煎機が別の場所にあるとかですか?
うちでは、焙煎マシンを使わずで手焙煎しているんです。
えぇっ!?手で??まじですか。
手といっても当然道具は使っています(笑)マシンだといっぱいつくることができますが、手焙煎したときにこっちの方が求める味が再現できると感じて、それ以来ずっと手焙煎なんです。なんでも機械化される時代へのアンチテーゼみたいなものかもしれません。
マシンが悪いと言いたい訳ではないのですが、時々「うちはこのマシンを使っています!」と、そこをウリにしているお店を見ると、「高性能のマシンを使ってるから美味しいの?」と疑問に思ってしまいます。
コーヒーはかつお節?路地裏珈琲のコーヒーができるまで
手焙煎は、どんな感じでつくられるのですか?めちゃくちゃ手間がかかりそうですね。
はい。時間がかかりますし、手が痛くなります(笑)まずは、豆の選別をします。農家さんの手で丁寧に育てられ、遠く離れた土地から、それこそ地球の裏側から長い時間をかけここまできた豆たちです。
できるだけ全部焙煎してあげたいので、珈琲になるかどうかどっちか分からないものは焙煎し、最後にチェックしています。
焙煎で重要なのは温度と時間です。どんな道具がよいのか、温度は何度ぐらいがいいのかもずいぶん研究しました。
珈琲豆に火を入れ終わると、竹ざるに上げなるべく早く冷まして、皮など余計なものをはずしていきます。最後にもう一度選別し、ある程度寝かせて完成です。
次は、コーヒーを淹れる工程ですね。まず淹れる直前に粉に挽きます。そして時間をかけてハンドドリップしていきます。
ふくらませすぎず、いれすぎずがポイントです。
淹れ方までむちゃくちゃこだわっていますね。
コーヒーって、かつお節とよく似てると思うんです。
生で捕る→余分なものをとる→燻製にする→寝かす→削る→漉す。
あとは、その出汁をどう使うか。コーヒー店のコーヒーの数だけバリエーションがあります。
私は、「雑味がなく、すーっと飲める。」のが好きです。
手間ひまかければかけるほど、よいものができると信じています。
まいにち、まいにち工夫する
この工程をきくと、毎日、気が狂いそうなほど、神経つかっていますね。びっくりです。
私は、毎日、毎日工夫しながらつくることを大事にしています。路地裏珈琲店では、三葉屋さんのパンを使わせてもらっているのですが、三葉屋さんのパンづくりの姿勢、とても尊敬しております。おいしい味をずっと続けていくって、大変なことだと思います。
それを機械ではなく、人間がやるんです。
朝、目が覚め一日が始まります。同じような毎日かもしれませんが、同じ日は一度もありません。毎日同じ味をつくるということは、毎日工夫をしていることだと思います。そこにモノづくりの真髄があると思っています。
たしかに…すごいことです。
うちのコーヒーは、コーヒーが苦手な人や「ミルク入れないと飲めない」と言ってた方も、「ここのは飲める」って言ってくださる方が多いんです。そういうお声をきくと、私が目指す「雑味がなく、すーっと飲めるコーヒー」が提供できてるのかなぁと思ったりします。
おっしゃってる意味、すごーくよくわかります。コーヒーって、脳にガツンとくるイメージがありますが、路地裏さんのコーヒーは優しいんですよ!!!この味が損なわれないように提供するスイーツも工夫されているんですよね?
はい。スイーツには上白糖を使っていません。私が今までに食べて感動したものを、そのまま届けたいって思っているので。フードもドリンクも妥協はありません。毎日舌のコンディションを整えてから味見してますし、常にブラッシュアップさせています。
素晴らしいです。オーダーが入ってから、いつも丁寧につくられているのが伝わってきます。路地裏珈琲のコーヒーやスイーツを食べたときに感じる感動のヒミツが少し分かった気がします。お話をありがとうございました。
路地裏珈琲のECサイト、はじまります
攝津さんの珈琲への情熱が込められたコーヒーが、ご自宅でも飲めるようになりました。
この感動をぜひ味わっていただきたいです。
ご紹介させていただいた通り、焙煎にはとってもとっても手間と時間がかかります。そして、攝津さんが感動した味だけをお届けされていますので、毎月数量限定になるようです。
ぜひぜひお試しください!
そして、感想をお聞かせくださいね。
撮影:Lily photo
アイキャッチデザイン:Margo design
路地裏珈琲店