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「ファシリテーション」という言葉をご存じですか?
ひとことで表すと、「会議やミーティングを円滑に進める技術」のこと。会議やミーティングで、円滑に進める役割をする人のことを「ファシリテーター」と言います。
コロナ禍で、オンライン会議が増えてきてからさらにファシリテーションという技術が重宝されるようになり、私もセミナー等でファシリテーターをさせていただく機会が増えてきたように思います。全体を見回しながら、メンバー全員をゴールに導いていくファシリテーターという役割は、簡単なようで難しい。
今回は、私はがとっても素敵だな~と思ったファシリテーターのチョモランマ山下(以下チョモさん)さんという方のご紹介。チョモさんのファシリ力のヒミツには、今をラクに生きるヒントがたくさん詰まっていました。
ゲーム感覚で、会いたい人に会いに行く
チョモさんは「ボードゲームを通じてここちよい生き方を伝えます」をコンセプトに、ボードゲームのファシリテーターとして全国を旅するファシリテーターです。
(詳しくはこちらをご欄くださいね!→チョモランマ山下さんのウェブサイト)
私とチョモさんの出会いは、編集者・文筆家の服部みれいさんがされていた聴く番組「声のメルマガ」。チョモさんは当時、「声のメルマガ」のアシスタントをされていて、私はリスナーでした。
チョモさんとつながったのは、「声のメルマガ」のnoteに私がコメントしたのがきっかけでしたよね?私は単なるリスナーで、普通にコメントしただけなのに丁寧にお返事くださって、その後SNSもフォローしてくれて・・・なんてきさくな人なんだと思ってたら、ある日「明日、愛媛に向かいます!お会いできたらうれしいです」ってDMもらってビックリしたんです。
そうでしたね!船で愛媛に行くことになったんですけど、「愛媛だったら、大木さんだな~。お会いしたいな~」って思ってDMしました。僕、いつもこんな感じなんです。突然思いついて、連絡する。「さすがに急だよ」って会えないことも多いんですけど、今回ダメでも次回は受け入れてもらえるんじゃないかな、接点だけでもつくることができたらなって前向きに考えています。
へ~。それって普通じゃないですよね(笑)。私は思い出してもらえてうれしかったですけど!
あまり先のことを詰めるのが好きじゃないんですよね。だいぶ前から打ち合わせで決めていても、変更になることも多いし。スケジュールが、パズルのようにパチっとハマったらラッキー。それこそゲームみたいな感覚ですね。
それって昔からですか?
この仕事をしはじめてからですね。会社員時代は工場勤めで、毎日ルーティンしかなかった。外に出て、いろんな人と交流する機会がなかったんです。
今、リアルでいろんな人と付き合うことにわずらわしさを感じている人も多いと思うのですが。チョモさんは人間関係を広げたいタイプだったんですね。
広がれば広がるほどうれしいですね!
比較のない世界に行きたい
チョモさんがボードゲームにハマったのって、子どもの頃に親戚とボードゲームしたのがきっかけだったんですよね。そのとき、どんな感覚だったんですか?
「フラットに付き合えるっていいなぁ」っていう感覚がありました。背が高い、勉強できる、スポーツができる、年齢、性別…そういうのを全部とっぱらって、付き合える。比較するものがなく、何も考えずに夢中になれて、共有できる。これをいろんな人と共有できたら、すごく嬉しいな~。幼いながら、そんなことを感じていました。
子どもの頃から、そんなことを感じられるってすごい。
僕は会社勤務9年目の頃、うつ状態で9ヶ月間家に引きこもっていたのですが、
そのとき、じわじわとゲームへの想いが湧き出てきたんです。会社員時代は誰かと競い合うとかはなかったけれど、企業にいる以上、売り上げや数字には向き合わざるを得なかった。職場の世界だけが、人生のほとんどを占めていました。
「フラットな付き合いを求めている」チョモさんにとって、会社での縦割り構成とか、閉鎖された感じが合わなかったのでしょうね。みれいさんの「声のメルマガ」でも、みれいさんに対して結構フラットだったような…!
「誰に対しても同じ接し方ができる人」というのは、妻にも言われたことがあります。著名人であろうが、友達であろうが、僕にとっては同じ存在。逆に言うと、誰とも深いつきあいはしていないかもしれません。だから、変なしがらみがないというか。
なるほど・・・それって、ファシリテーターとして大切なことなのかも。
トランスフォーメーションゲーム®︎(トランスフォーメーションゲームについてはこちらをご覧ください→トランスフォーメーションゲームについて)は、個人の深い部分に入るゲームです。参加者の方と時間を共にするのは、たった1日2日だけど、トランスフォーメーションゲーム®︎を通じて、その人の深いところまで入っていく。「狭く深く」「広く浅く」という言葉が在りますが、僕の場合は「広く深く」なのかもしれない。
答えは自分で見つけるもの
なるほど。「広く深く」、分かる気がするなぁ。ファシリテーションするときに心がけていることはありますか?人の内面に入りすぎないようにする・・・とか。
「誰も一人ぼっちにしない」というのは意識しています。慣れてない人が、ひとりにならないように気を配ります。また、人によっては、「ここからは入って来ないでほしい」という空気を感じることもあります。距離感は常に意識しています。
「ここまで」っていうのはどうやって線引してますか?
それは、表情とか見ると分かります。
私は空気を読み過ぎて、「どうにか救ってあげなきゃ」というモードに入ってしまいがちなんですけど、そういうことはありませんか?
あるある。最初は、「答えを僕が出さないといけない」って思ってました。トランスフォーメーションゲーム®︎の場合、最初にゲームの目的決めるんですけど、「お金も払ってもらっているし、その人に有益になることをしないといけない」と思い込んで、答えになるようなことを誘導している時期もありました。そうするとやっぱり僕自身がクタクタに疲れちゃって、動けなくなったりとか。
分かるなぁ。どうやって、その段階を脱出したんですか?
ファシリテーターになるためにフィンドフォーンに行ったときに、トレーナーの方に開口一番に、「チョモやり過ぎだ!」って言われたんです。「あなたが答え出すわけじゃないよ。本人が、答えを出すんだよ。自分で見つけるような質問を見つけないといけない。あなたの狭い視野でしか見てないから逆効果だよ」って。
うわぁ。私にも響く・・・。結局、一人ひとりが自分で答えを見つけないといけないんですね。
正直、ゲームが終わったあとの空気感で、「この人、どう思ってるんだろう?」「たいしたことなかったって思われてるかも」って不安に思ったこともあります。でも、気づきのレベルって人それぞれだし、そのときは気づいてなくてもあとからすごい発見があるかもしれない。実際、トランスフォーメーションゲーム®︎の1年後に感想をくださる方もいます。だから、反省はあっても、自分自身を責めないようにしようとは意識しています。反省と自己卑下は違うと思っています。
自分にはこれがあるから大丈夫!
フィンドフォーンで学んだことで、心に残っているエピソードはありますか?
中盤から後半に差しかかるときに、海の近くを散歩してたら胸があつくなる瞬間があったんです。なんの根拠もないんですけど、「このゲームがあれば、自分は大丈夫だ」って、心の底から満たされた瞬間があった。まだファシリテーターにもなってないし、はじまったばかりだったんだけど、「生涯の親友をみつけた」「これで大丈夫」って。何がそうさせたかは分からないけれど、フィンドフォーンにはこの感覚をつかみに行ったと言っても過言ではないです。
それまでは、チョモさんの自己肯定感ってどんな感じでしたか?
ずっと「何かに属していないといけない」って思い込んでいました。「自分で何かをやっていく」という感覚が全然なくて。アイデンティティがなかったかも。よく、「存在しているだけでいいんだよ」っていうけれど、その意味もよく分からなかった。
うつ状態になったときって、なにか大きなきっかけがあったんですか?
ストレスがたまっていたのだと思います。見て見ぬふりをしていたら、ある日突然身体が動かなくなりました。休職中は、自分が社会から切り離された感じで、いつも「自分って何なんだろう」って考えていました。
そういうモヤモヤは、エムエム・ブックス(服部みれいさんの会社)に行きはじめたことによって解決したのでしょうか。
そうですね。エムエム・ブックスでは「本当にすきなこと、やりたい事って何だろう」って、考える時間を与えてもらいました。
エムエム・ブックスに通ってお仕事のお手伝いをしながらも、ボードゲームは平行してやってたんですか?
はい。うつ状態になってからも、ボードゲームだけはずっとやってたんです。一人で何役もしながら、コマを動かして。体調が回復してからは、エムエム・ブックスに通いつつ、ゲーム会を開催する時間も持てるようになりました。
それがすごいですよね。子どもの頃から、一度もボードゲームから離れてないじゃないですか。
そうですね。大学のときは、学生寮みたいなアパートに入っていたので、毎日誰かの部屋の遊びに行って、ボードゲームしようって誘ってましたね。
そこ、特殊能力ですよね。積極的!
社会人になって東京に住んでいたときも、寮の同期が20人ぐらいいて。毎日、誰かの部屋に行ってボードゲームしてましたね。
大学生って、ゲームといえば麻雀なイメージですけど(笑)。みなさんボードゲーム楽しんでくれましたか?
そーっすね!みんな「おもしろーい」って言ってくれて、新しいゲーム探してくれたりとかして。「山下くんとやるとゲームがおもしろくなる」って言ってもらえてうれしかったです。
へぇ~!それって何でだと思いますか?
盛り上げ方とかテンポかなぁ。「チョモさんと一緒にやって、チョモさんに勝ちたい」とか言ってくれる人もいました。
そっか~すごいな~。
単純に自分が好きだからかな。ゲームはみんなのものだし、僕がいなくてもいいんだけど、僕がいることで「ボードゲーム=楽しいツール」として広がったらうれしいですね。
“ボードゲーム”という媒体があるから
ボードゲームっていう媒体がなかったとしたら、そういう積極性ってあったと思いますか?たとえば、学校で一人ぼっちの子がいたら、声かけてしまうとか。
ないっすね(きっぱり)!ボードゲームだからできる。それ以外のツールで、人と接するのはあんまりできないかな~。
ゲームがなかったら、どんなキャラだと思いますか?
結構まじめなタイプだと思いますよ。今も、陽キャラではないと思うし、ゲームがあるから人とつながれるんだと思います。
私も一緒かも。取材だと話せるし、聴けるんですよね。でも、プライベートで遊びに行ったら、あまりしゃべらないかも。
僕はコミュ力が、あるわけではない。相手も「ボードゲームの人」って接してくれるからいいのかも。
フラットであるということ
ファシリテーターって、とってもエネルギーつかうと思います。いろんな人をまとめていくのにコツはありますか?
いろんな人がいるけれど、人の嫌なところよりも、いいところをみるようにしています。そうすることで、前向きなファシリテートに繋がると思っています。
それって難しいことですね。人の悩みの大半は人間関係と言いますが・・・「うわ~付き合いたくないなぁ」「この人嫌だなぁ」って思う人とかいないんですか?
今の僕、人間関係の悩みゼロですね!
すごい・・・言い切りましたね。チョモさん、今までに親友っていました?
うーん・・・誰か一人選べって言われたら難しいかも。強いて言うなら、妻ですね。妻は親友。それだけは、言える。あとは、全員フラットかも。
なるほど。フラットなんですね。チョモさんの人生、「フラットであること」がキーワードなのかも。ゲームの魅力も「フラットでいられる」ことですもんね。そう思うと、ファシリテーションするときの一番のコツは「フラットでいること」なのかもしれないですね。
まとめ
チョモさんとお話して、チョモさんが天然でやっていること・・・今の時代に必要なことだと感じました。いろんな経験を重ねながら生きている私たちは、「フラットであること」がだんだん難しくなってきます。人を肩書き、年齢、性別、職業で判断し、自分の経験と照らし合わせて「付き合う・付き合わない」を決めたり・・・。自分のフィルターで、ものごとを判断するようになってしまう。それが悪いことではないけれど、「フラットでいられること」を経験するのって、ものすごく必要なのかもしれません。
フラットでいる心地よさ、チョモさんのボードゲームで体験できます!
全国をまわってますので、チョモさんの発信をぜひチェックしてくださいね。
アイキャッチ:MARGODESIGN
チョモランマ山下